プリン姫と駄菓子王子



3年生になって1週間。
私の周りはドS王子のおかげでめちゃくちゃ騒がしい。
なぜか気に入られたらしくって、何かと言えば私に絡んでくる。
今までは、男の子とあんまり親しく話す事なんかなかったけど…ここ最近は王子のせいで…ううん、王子のおかげで親しく話せるようになった。
Z組は風紀委員のたまり場で、その中心に王子が居るから…王子が私に話しかけると、自然と風紀委員の皆とも話をするようになった。
皆怖い顔だけど優しい人ばっかりで、男の子と話しをするのも楽しいかな、って思うようになった。

風紀委員長の近藤さんは、ゴリラ似のストーカーだけどとっても頼りになる人で、皆のお父さん的存在。
…ウチの姉上にストーキングするのは止めて欲しいな…でも、私の事を妹みたいに可愛がってくれるのは、ちょっとだけ嬉しかったりします。
副委員長の土方さんは、常に瞳孔が開きっぱなしで目付きも悪くて怖いけど、ドS王子の無茶苦茶な行動をこっそりフォローしてあげたりしてて、意外と優しい人だ。良いなぁ、仲良しで。
後、いっつもカゲの薄い山崎君。
皆のフォローしてるのに、いっつも可愛そうな事になってて…
頑張れ、って遠くから応援してあげよう。
原田君と永倉君も凶悪に怖い顔だけど、王子にいじめられてると庇ってくれたりする優しい人達だ。
伊東さんは、すっごくジェントルマンで、こっちが恥ずかしくなるような事を色々してくれる。
なんだかお姫さまになった気分になっちゃうよ…神楽ちゃんはそれがすごく嬉しいらしくって、最近は伊東さんを見かける度に駆け寄ってお話してるよ。

うん、2年生までは男の子となんか全然話さなかったし、なんか怖い、って思ってたけど…
話してみると、意外と面白い発見が色々有った。
そんな事を知る事が出来たのは、王子のおかげなんだよなぁ…
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、感謝してあげようかな…とか思ったりもする。

そんな王子様と、私は今教室に2人で居残りさせられている。
王子が忘れた宿題のプリントを、なんとか完成させて提出させなければいけなくなってしまった…
なんで私がっ…私は王子の教育係じゃないもん!!
プリントをやらなきゃいけない王子は、ぼりぼりと駄菓子を食べてるし…
なんでかいっつも教室で駄菓子食べてるんだよな、この人…これだけ食べて、良く太らないよな…羨ましい…
私がじとり、と半分睨んだ感じで王子を見ていると、じぃ、と私を見た王子がこくりと首を傾げる。

「おーいパチ恵ぇ、んまい棒喰うか?コンポタ味だぜィ。」

「もぅ、プリントは終わったの?」

「終わった終わった、完璧だぜィ。」

ひらひらと振るプリントを、ざっとチェックすると、本当にちゃんと出来てる…やれば出来るんじゃん。
なんで初めっからちゃんとやらないかなぁ、この人は…

「で?んまい棒…」

「王子がお菓子くれるなんて珍しい…タダ?」

「だーから、王子は止めなせぇ…総悟で良いって言ってんのにねぇ…ホレ、ちゃんと喰って大きくなれよー。」

王子がんまい棒でぺしぺしと私の頭を叩く。

「もうっ!普通に渡せないんですかっ!?」

「なんでィ、スカイシップでィ。」

「…スキンシップとか…?」

「おぅ、それでィ。」

王子がにっこりと笑う。
何故か…私には見せてくれるんだよな…こんな笑顔…
いつもはニヤリ、としか笑わないくせに…

「喰わねぇの?おっ、喰わせて欲しいのかィ?」

「んな訳ないでしょうがっ!…有難うございます…」

「どーいたしまして。美味いぜ?俺の棒。」

俺の、って…別に普通のんまい棒だよね…?

「…普通のんまい棒でしょ…?」

私がんまい棒を持上げて、じろじろと眺めまわしてると王子がクスリと笑う。

「かなわねぇなぁ、パチ恵には。エロい意味だよ、エロい意味。」

「えっ…?えろ…?」

「似てんだろ?形がココと。」

私が首をかしげると、王子が説明してくれる。
でも、ココってどこ…?王子が指差す場所をじっと見る。
…えっと…お腹の下…の…

ぼふん

わっ…分かっちゃった…えっ…えーっ!?んまい棒に似てるのっ!?

「えっ…かっ…形って…似てるの…?…もぅんまい棒食べらんないよっ…」

私が真っ赤になって下から睨むと、王子はふん、って顔で私を見る。

「何言ってんでィ。んな事言ってたら、ソーセージもバナナも喰えねぇだろうが。」

「えぇっ!?ウソっ!そんなにっ!?」

「あー…可愛いねィ、パチ恵は…」