そーして、僕らは、家族になった。

ACT 4 その後の坂本家


お父さん達と暮らし始めて1週間。
お兄ちゃん達との生活も、そこそこ慣れてきました。

ちょっとだけ、ゴタゴタが有ったけど…
それと言うのもお父さんがどうしても、って言うんで、私だけ『近藤』を名乗っていて…

「一緒に居ないんだから、名前ぐらいちゃんと名乗り。」

って言われたら、確かにそうだな、って思った。
血の繋がったお父さんは『坂本辰馬』だけど、お母さんの旦那様は『近藤勲』だもの!私のおと−さんだもんっ!!
でも、お兄ちゃん達には分かって貰えなかったらしくって…説明するの、結構大変だった。
特に、十四郎お兄ちゃんはおとーさんの事知ってるから、余計誤解されて…

「ゴリラだから嫌なのか?近藤さんは良いヤツだ。あんな優しい男は居ない…」

と、延々お説教をされてしまった…
私だってそんな事知ってるもんっ!
なんとかお話して分かって貰えた頃には朝になってて、晋助お兄ちゃんは私の隣でこくりこくりと眠っちゃってた。
十四郎お兄ちゃんが怖かったから、何かされたら大変、って隣に居てくれたんだ。優しいよなぁ!

そんな事もあったけど、今は誤解も解けてなんとか仲良くやっています。

お父さんは、お仕事忙しいのに毎日お家に帰って来てくれて、朝ご飯と晩ご飯は絶対皆で一緒に食べる事!って決まりを作ってくれた。

お兄ちゃん達は色々忙しいみたいで、揃わない事多かったのに…良かったのかなぁ?
皆一緒の方が、片付けが早く終わるんで嬉しいけど…
それに…やっぱり沢山で食べるご飯の方が美味しいし…
ご飯食べ終わった後も、なんとなくお茶を飲んで、皆でテレビを見たりお話したりできるし…

私は、すっごく嬉しい。


晋助お兄ちゃんはとにかく優しいお兄ちゃんで。
兄妹の居ない私に、色々教えてくれる。

お料理がすっごく上手で、今まで作った事も無いようなお料理を、いっぱい教えてくれるんだ!
それに…今までずっと1人でご飯の支度をしてたから…お兄ちゃんと2人でお料理するのがすっごく楽しい。
色々お話しながらお料理してると、いつもより美味しいご飯が作れる気がする!
きっと、お兄ちゃんの作るお料理が美味しいんだろうけど、私までお料理の腕が上がった気がするんだ。
…近藤さん…ちゃんとご飯食べてるのかなぁ…?お母さんのお料理は…アレだし…
うん、今度お父さんにお願いして実家にお料理作りに帰ろう!
晋助お兄ちゃんに教わったお料理、いっぱい食べて貰おうっと。

お料理以外にも、晋介お兄ちゃんは色々教えてくれる。
普通家族は、おはようとおやすみのちゅーをする、とか。
二十歳までは、兄妹は一緒にお風呂に入るとか。
本当は皆一緒に1つのお布団で寝るものだ、とか。

私はお母さんと2人暮らしだったからなぁ…まさか皆のお家がそんな仲良しだなんて知らなかったよっ!
いきなりは無理なんで…ちゅーはほっぺで許して貰った。
お風呂は…恥ずかしいよ!無理無理無理っ!泣きそうになったら、その内な、って言ってくれた。でも、その内も無いよっ

…ホントに入るのかなぁ…?

お布団は、皆それぞれお部屋があるから、たまに晋助お兄ちゃんが私の部屋に泊まりに来てくれる。
ぎゅ、ってだっこしてくれるんで、凄く安心できるんだ。
十四郎お兄ちゃんは来てくれないけど…やっぱりおとーさんの事があるから、私嫌われてるのかなぁ…


そう、十四郎お兄ちゃんは…未だにちょっと怖い。
だって、ずっと瞳孔開いてるんだもん…ちらっと見られて睨まれたりするし…話しかけてもあんまり応えてくれないし…
やっぱり私、邪魔なのかなぁ…

それに、私の作ったご飯に、いっぱいいっぱいマヨネーズかけるし…美味しくないのかなぁ…
ちょっとだけ、落ち込むよ…
晋助お兄ちゃんに相談したら、アイツはマヨラーだから仕方ない、って言ってくれた。
マヨラー…?って…何にでもマヨネーズかける人の事だよね…?
試しに、おやつにお団子出してみたら、お団子にもマヨネーズかけて食べてた………
だから、あぁ、仕方ないんだな、って思った。
でも、あんなにマヨネーズばっかり食べてたら、体に悪いよなぁ…大丈夫なのかな…?
ちょっと心配だよ。



そんな風にばたばたしてて忘れてたけど、良く考えたら私、今年高校受験でした。

どっ…どうしよう!もう秋だよっ!!
お母さんと住んでた頃はちゃんと受験勉強してたけど、ここの所何も出来ないでいたし…
この間のテスト…あんまり良くなかったし…

このままじゃいけないって、ご飯を食べてすぐに部屋に籠って勉強していると、コンコン、と扉をノックする音が聞こえる。

「…パチ恵どうした…?具合悪いのか…?」

「十四郎お兄ちゃん!?」

そこに居たのは十四郎お兄ちゃんで…お盆にお茶を乗せて持って来てくれていた。

「あっ…あのね…?私今年高校受験だったの忘れてて…お勉強全然してなくって…マズイの…」

「…どれぐらいマズいんだ…?」

「…このくらい…」

十四郎お兄ちゃんにこの間のテストを見せると、眉間に皺が寄る。

「…今年受験なんだよな…?どこ受けるんだ?」

「…銀魂高校…」

「………」

十四郎お兄ちゃんが押し黙る。
やっぱり凄くマズいよね…?
2人で黙ったまま俯いてると、晋助お兄ちゃんとお父さんも私の部屋にやって来た。

「パチ恵〜、テレビ見ないがか?」

「…マヨラーに苛められたか…?」

「お父さんー!晋助お兄ちゃんー!!」

私が2人に駆け寄ると、2人が十四郎お兄ちゃんを睨む。

「十四郎…きさん、何しよったぜよ…?」

「…殺す…」

「違うの!十四郎お兄ちゃんは私の事心配して来てくれたの!!でも…私があまりにもダメで…」

2人にも今年受験生で、って話をしてこの間のテストを見せると、悲しい顔になった。
…やっぱり誰が見てもダメダメなんだよぅっ…

「俺は理系が得意だ。晋助は…文系得意だったよな?」

「…おぅ…」

「パチ恵、ビシビシ行くから覚悟しろ。」

「お父さんは面接の極意を教えちゃるぜよ。」

「…あの…」

お父さんががニッ、と笑って親指を立てる。

「パチ恵の家庭教師大作戦じゃ!」

お父さんの後ろで、お兄ちゃん達も苦笑しながら親指を立ててる…

皆…!!

「お願いしますっ!!」