新八君と夏の思い出…

まだ作ってないんじゃねェかィ?

もう残暑でさァ…

今からでも間に合う!!

新八ィィィィイ!!

俺と夏のでェとを楽しみやしょうぜィ♪






『残暑でェと』






もう8月も半ば…

このあたりでの祭りも花火大会も今日で終いだ

沖田は仕事だろうが関係なく

これ程までに必死でサボったのは初めてで

その理由はただ一つ…

新八と夏の思い出が欲しい

だった……


「お、お待たせ…しやした…新八ィ…」

「沖田さん…大丈夫;?」

「だ、いじょうぶ…でィ」


肩で息をつく沖田が駆けて来た

いや、全力疾走だったに違いない

浴衣も着崩れする程…

汗だくで、

これから楽しくデートと言うには消耗しきっている

新八はちょっと困ったような顔をした

持っていた団扇で沖田を扇ぐ


「遊ぶ前から体力使い切ってません?」

「まだまだ…いけまさァ」


ゼェと苦しそうに息をつく

とても大丈夫には見えない

神社で執り行われている賑やかな祭りを前に新八は石段に座った


「ちょっと休みましょ」

「だ、だいじょ…」

「時間はありますから」


沖田はぐったりと石段に崩れ落ちた

大股に開いた足に両腕を掛けて頭を落とす

汗が流れる



幸先悪ィ……

土方コノヤロー…しつっこいんでィ!!

大事なデェトの日ぐらいサボらせろィ!!

あー…疲れやした…

浴衣ァ走り辛ェし…

滑り出しからグダグダでィ



サボる為に全身全霊逃げて来たのだ

屯所に戻れば、

この続きが待っているだろう

沖田は汗を拭って扇ぐ新八を見上げた


「すいやせん…」

「どーせまた土方さん怒らせたんでしょ。仕方の無い人ですね」


笑ってる…

沖田はまた深く俯くと


「浴衣ァ…似合ってまさァ。可愛いですぜ…」


ボソリと呟いた

有難う御座います、と言われた

きっと最高の笑顔に違いないのに見られない

今それを見てしまったら…

残り少ない体力を根こそぎ持っていかれる

我慢した


「さ、行きやすか…//」


誤魔化すように立ち上がって

もう一度袖口で汗を拭き取ると新八の腕を掴んだ

それから手を握って

団扇を奪うと自分で扇ぐ


「手が暑い…」

「我儘言いなさんな。俺ァ既に汗だくなんでィ」

「手なんか繋がなくても」

「馬鹿言っちゃいけねェや!!デェトで手を繋がない恋人なんているかィ!!」


沖田は豪語すると

掴んでいた手にガッチリ指を絡めて握り直す

外れないように…


「迷子になるなよ新八ィ」

「なりませんよッ」


手を握るかどうかの談義など有耶無耶にして

賑やかな灯りの中に混じって行く

汗を浮かべた顔がニッと笑えば

新八もやれやれ、と笑った