独占欲とホントのキモチ。
ピ。
「それから…」
ピ、ピ。
「そうそう、それで」
ピピ。
「…あ」
「…うん、電源ボタン連打すると、皆消えちまったりしまさァ」
「先に言って…」
新八が携帯を持つ事になった時、当人よりも沖田の方が大喜びで。
ショップの紹介から機種選び、料金設定に至るまで。
沖田は新八にベッタリと付き合い、今は
「携帯は電話よかメールのが安いし、便利」
と言いくるめ、屋上にてメールの特訓中だったりする。
因みに、機種は操作を教えやすいから、と沖田の機種の色違いになった。
と言うかされた。
「俺のと新八のは同じ会社のだから、番号が分かりゃアドレスとかはなくてもメールは出来まさァ」
「そうなんだ…」
「でも、一応作っとくかィ。俺のがこれだから…」
沖田はひょいと新八の携帯を取り上げ、勝手知ったると言わんばかりにアドレスを設定してしまう。
「ち、ちょっと沖田君!勝手に…って、あーもう……この数字って、何?」
沖田に登録されてしまったアドレスに、新八は首を傾げている。
「分かりやせんかィ?前後のアルファベットと組ませたらすぐに分かる筈でさァ」
「アルファベットと数字…SS08120708SO…」
「真ん中で区切るんでィ」
「真ん中…ってこれ、僕とアンタのイニシャルと誕生日…!」
「お、ご名答」
ニヤニヤ笑いを浮かべる沖田の顔を見た新八は、抗議する気も失せて脱力する。
「なんつうこっぱずかしい…見る人が見たら丸分かりですよ、これ…」
携帯を眺めつつ、ため息をつく新八の頬が心なしか赤い。
「意外に分かんねぇもんだぜ?因みに、俺のは新八のを逆にしただけですけどねィ」
「え!」
「誰も何も突っ込んでなんか来やせんぜ?大体、住所録に登録しちまったら表示は大抵名前で出まさァ。…でも、新八が嫌なら…」
「もういいですよ、今更考えるのも面倒だし。このまま使わせて貰いますよ」
しょうがない、と新八は沖田に笑い、再び携帯の操作手順を見る。
一生懸命携帯の操作をしている新八を見ながら、沖田は内心
(単品じゃ分かんなくても、俺のと並びゃ流石に…と思いやすがねィ)
でも、口には出さない。
出せば、新八が真っ赤になって、アドレスを変えると言い出し兼ねないからだ。
(それに…
わざわざ自分の想いにトドメを刺しに来る馬鹿もいないだろうと、沖田はほくそ笑む。
そもそも、沖田と新八は殆ど公認の仲だ。
新八は未だにバレてないと思い込んでいるようだけれど…。
「う〜ん、大体は分かったけど、当分は沖田君みたいには打てそうにないよ…」
「それが普通でさァ。慣れるまではそんなもんでィ」
「そりゃそうだよね。じゃあそろそろ帰ろっか」
携帯をパチンと閉じ、広げた取説を鞄に戻して、二人は屋上を後にした。。
…………
ピ、ピ。
「これで変換…と、出た。で…、あ」
メールを打っていた新八が、画面上部のメール着信予告の表示に気付く。
「あー、また間に合わなかった…」
メール作成画面の上に重なるように、メール着信の選択表示が出た。
送信者名は「沖田総悟」。
「ったく…」
メールを開く。
この操作だけは、かなり手慣れたものになってきた。
返信を打っている間に沖田からのメールが届き、その度に返信は中断。
お陰でまだ一度も返信出来ていない。
2
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