SECOND CONTACT



みなさんこんにちわ、志村新八です。
今日は僕が万事屋の食事当番なので、先日(やっと)入った依頼料を手に大江戸ストアまで買出しにやって来ました。
今の万事屋の冷蔵庫は、マヨすら入って無いくらいカラッカラで。

…アノ2人は使ったら使いっぱなし、食べたら食べっぱなしで補充なんてしやしないからちょっと気を抜くと何も無くなるんです…

それなのに、こんな時に限ってアノ2人はどっかに雲隠れしちゃって居やしねぇしっ!!! 何を作るにしても、激安商品を見繕って色々買って帰らなきゃぁいけないので、依頼料が入った時には結構な買い物になるから荷物持って貰おうと思ってたのに…ってーか、アイツラが食べてるモノなんだから、ソレぐらいやってくれてもいーじゃん!!

はぁ………

結局1人での大量の買い物の帰り道、ふと気付くと街中に何か凄い人垣が出来ていた。何だ…?
荷物は重いけど、ちょっと気になる…

僕がよっこいせ、と荷物を持ち上げて近付くと、急に人垣が割れて中が見えるようになった。
…どれどれ…?


……沖田さんっっっっっっっっ―――――!!


人垣の中心では真選組が捕り物の真っ最中だったようで、丁度沖田さんが盛大にバズーカを撃って、危険を感じたギャラリーが更に遠巻きに輪を広げた所だったようだ。


うわ――うわ―――うわ―――― !
らっきぃ――――――――――――――――!!


こんな所で沖田さんに逢えるなんて、信じられない!!!
1人で頑張ってた僕に、神様がくれたご褒美かな?

バズーカを撃ち終えた沖田さんが、今度は武器を刀に持ち替える。か細い腕で刀を一振りして、そのままするりと犯人に駆け寄り刀を振り下ろす。でも寸での所でその刀を避けた犯人を、すぐに沖田さんの弐太刀、参太刀が追いかける。
その動きは美しく、まるで、舞を舞っているようだった…


…嫁之塚みたいだ………まさしく、男装の麗人………


僕がそんな事を考えてボーっとしている内に犯人は捕まったらしく、真選組の皆さんがこっちに向かって歩いて来る。
そうだ!確かさっきスーパーで飲み物も買ったっけ!沖田さんに差し入れしよっと!
僕は大荷物の中からお茶を取り出し、沖田さんに駆け寄る。

「沖田さ―――ん!」

彼女は僕に気付いてくれたらしく、微笑みこちらに手を上げてくれる。
…僕のこと、覚えてくれてたんだっ!

「お仕事お疲れ様です!あの、コレ、良かったら飲んでくださいっ!」

僕がお茶を差し出すと、にっこりと微笑んで受け取ってくれた。

あぁ―――綺麗だなぁ――――

でも、なんで沖田さんはこんな物騒な集団に居るんだろう…?
何で土方さんや、もっと偉い人は何も言わないんだろう?
沖田さんはこんな綺麗で華奢でか弱いな女性なのに、大怪我なんかしたら、どうするんだろっ!?

「沖田さん、沖田さんは真選組なんて物騒な所に居て大丈夫なんですか?怪我したりとかしないかって…僕心配ですっ!さっきは嫁之塚みたいで、すっっっっっっっっっっっっっっっごく、ステキでしたけどっ!でも沖田さんはじょせ…」

すると、沖田さんの指が、僕の口を塞ぐ。


…ゆっ…ゆっゆっゆっゆびィィィィィィィィィィ!!!!!!!ゆびがゆびがゆびがゆびがゆびがゆびがゆびがゆびがゆびがゆびがゆびがゆびがぁぁぁぁぁぁぁ…


沖田さんは、もう片方の指をその愛らしい桜色の唇に当てて、
しぃ――――っ、という仕草をした。
えっ…?沖田さんが女の人、って事は言っちゃダメなのかな…?

はっ!!

確かに…あんなムサイ男所帯に、こんな綺麗な女性が居ると分かれば、沖田さんの貞操の危機だ!
だから、男装して、男として真選組にいるのか…!

…そこまでして居るような所なら…きっと僕程度じゃ計り知れない大きな理由が有るんだろうな…
そうだとしたら、僕なんかが口を出す事じゃ無い…
だからそれ以上は深く聞けなくて、僕は、それじゃぁ頑張って下さい、と沖田さんに告げて万事屋に帰る事にした。

あぁ、今日は又少し沖田さんの事が分かった。
少しづつで良いから、もっともっと沖田さんの事を知りたいと思う。これが…恋する気持ち、何だろうな…


なんてね!
なんてね!!


少し歩いた所で、後ろから僕に声が掛けられた。
真選組の…山崎さんと言うヒトらしい。
沖田さんの命令で、半分、僕の荷物を持ってくれる為に来てくれたんだって。

『志村君大変そうだから手伝ってあげて?』なんて言ってくれたのかな…?でも、男としてそれはどうだろう?もっともっと頼りがいがある所、見せたいよねっ!
それにしても…沖田さんって優しい…綺麗なだけじゃぁなくて、こんなに優しいなんて…
本当に素敵な女性だな!沖田さんはっ!!

僕は心の中でもう何回目かの惚れ直しを感じながら、軽い足取りで万事屋への道を歩いた。



つづく