ぷろぽーず大作戦


「新八―っ!酢コンブがきれたアル!買い物行くヨ!」

「めずらし…神楽ちゃんが一緒に行こうだなんて…いっつも買ってこーい!とか言うクセに…」

僕が驚いた顔で言い返すと、ぷぅ、とふくれる。
あははっ、こうしてると可愛いのに…

「だって、外は敵が多いヨ!ワタシが付いてかないと新八さらわれちゃうネ!!」

イヤイヤイヤ、敵って…

「僕、そんなに敵多いかなぁ…」

「多いネ!黒い軍団とかヅラとか目隠しヤロウとかモジャとか!!」

「…イヤ、その人達別に敵じゃないし…」

「敵ネ!ミンナ新八をネラってるネ!!」

…そうなのか…?皆良い人に見えるけど…実は僕嫌われてたのかなぁ…笑顔の裏には、テメー話しかけてんじゃねーよ!的な何かが隠れてたのか…?
ちょっとヘコむよ…

「そうだったんだ…僕って意外と皆に嫌われてたんだね…?そうだよね、皆銀さんの事好きだしね…僕が周りをうろちょろしてたら目ざわりだよね…沖田さんだって、銀さんか神楽ちゃんにしか話しかけないもんね…」

あ、言ってて悲しくなってきた…
僕がずぅ―――ん、と影を背負うと、慌てた神楽ちゃんが、僕の腕を掴む。

「違うネ!ミンナ新八がすっ………嫌いなだけヨ!!」

ずぅぅぅぅぅ――――――ん…

神楽ちゃん…ソレ、フォローじゃないよ…
僕は更にがっくりと項垂れる。トドメですか……?

「だっ…ダイジョウブネ!ワタシは新八好きヨ!!およめさんになってやるヨ!!」

神楽ちゃんが泣きそうな顔で、僕に縋ってくる。
はは…可愛いフォローだなぁ。ちょっと元気になるよ!

「そうだね、僕も神楽ちゃん好きだよ?大きくなっても忘れてなかったら、お嫁さんになってくれる?」

「忘れないアル!!今すぐでもイイネ!!」

神楽ちゃんが嬉しそうににっこり笑う。
良い子だなぁー…よしよし、と頭を撫でてあげると、ぎゅーと抱きついてくる。

「神楽ー、娘は黙ってなさい?お母さんはお父さんのだから。新八から離れなさーい?新八ー、銀さんはホントに新八の事好きだからねー?もうオマエ、嫁さんだと思ってるから。」

今まで社長席にだらだら座っていた銀さんが、いつの間にか僕らの隣に来ていて神楽ちゃんをべりっ、と剥がす。

「銀ちゃん何するネ!新八におっさん臭がうつるネ!!向こう行ってるヨロシ!」

首根っこ掴まれた神楽ちゃんが、ぶら下げられたままバタバタ暴れる。

「まぁまぁ神楽ちゃん。銀さんは大人だから、さっきの僕らの話を聞いてて僕を励まそうとしてこんな馬鹿な話してるんだよ。僕が銀さんの嫁なんて有り得ないから。」

僕が笑顔で言うと、銀さんが胸を押さえてうずくまる。

「新ちゃんヒドい…銀さんマジなのにぃ―――」

「あはは、もう良いですよフォローは。僕そんなに落ち込んでませんよ?ホント銀さんって父上みたい…」

僕が笑うと、銀さんが床にのの字を書く。さてと、

「買い物に行こうか、神楽ちゃ…」

僕らが買い物に行こうとしていると、玄関が開いた。

「新ちゃん居るー?」

「姉上?あれ、九兵衛さんも…いらっしゃい、何か依頼ですか?」

「えぇ、何か九ちゃんが新ちゃんに用事が有るって…」

「やっ…やぁ新八君、こんにちわ…」

何故か緊張した面持ちの九兵衛さんが、頬を染めて僕に近寄ってくる。
何だろう…柳生家の一大事とか…!?イヤ、流石にそんな事、万事屋では無理無理無理!!解決なんてできないから!!
僕がソファを勧めようと手を差し出すと、思い詰めた顔をした九兵衛さんが、僕の手をぎゅうと握ってくる。
えぇっ!?男に触って大丈夫なの!?コノ人!?

「新八君!僕のお嫁さんになってはくれないか!?」

「えっ…?ええええええええええええ!!??」

じょっ…冗談…ではなさそう…目がマジだよっ!?

「君しか居ないんだ!妙ちゃんにそっくりだし、君になら触っても大丈夫なんだ。それに、男の子だから全く問題無いだろう?」

九兵衛さんがぐぐっと近づいてくる。イヤ、何がァァァァァァァァァ!?

「あっ…姉上ェェェェェ!?ちょっ、何ですかコレェェェェェェェ!?」

流石にフリーズしていた姉上が正気に返る。そして、にっこり笑って最後通告を僕にする。

「新ちゃん、コレは良いお話よ?九ちゃんなら家柄も申し分無いし、第一可愛い女の子じゃない。ワタシはお勧めだな。」

ちょっ、姉上ェェェェェェェェェェ!?気でも触れましたかぁぁぁぁぁ…アレ?別に良いのか…?でも……

「姉上、でも僕は…………」

がらっ

「新八君はおるかー?」

いきなり窓が開いて、坂本さんが入ってくる…

「おー、おったおった。ココで新八君にプロポーズ大会が有るち聞いたきに、ワシも参戦じゃあ。」

「何がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

僕が叫ぶと同時に、僕の手を握っていた九兵衛さんの手に手刀が落とされる。
横を見ると…高杉さん!?

「新八は、俺が貰ってやる。」

「えぇっ!?」

何でコノ人がこんな所に!?
驚く僕を、誰かが後ろから抱き寄せる。

「新八君、大事無いか?嫁入り前に攫われてはかなわんぞ?」

この声は………

「桂さん!?」

僕が振り向こうとすると、高杉さんと反対側の横に、桂さんが居た。って事は後ろの人はエリザベス先輩…?

「争奪戦か…面白い。」

…だっ…誰…!?
慌てて振り向くと、やっぱりエリザベス先輩!ちょっ…この人喋れるのっ!?
ニヤリ、とニヒルに笑ったエリザベス先輩が、カッコよくウインクを決める。

「声を聞かせるのは、新八だけだぜ?」

「はーどぼいるどぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


ひゅるるるるるるるるるるるるる………………どぉ――――――ん!!!!!