僕がテレビをつけると、丁度再放送のドラマをやっていた。
それは恋愛ドラマで…主人公が彼氏が浮気している現場を目撃してしまうという…今の僕には最悪な内容で…

あーもう!タイミング悪いなぁ…僕…又涙がこぼれて来ちゃうよ…

ドラマでは…彼氏の浮気は主人公の女の子の勘違いで…相手だって思ってた女の子は何も関係なかった。
でも…現実はそんな上手くいくものじゃないよね…
大体、僕女の子じゃないしね…

そのままだらだらテレビを見ていたら、いつの間にかお昼になっていた。
…姉さん…遅くない…?
何処まで買い物に…?コンビニだって、スーパーだって30分も有れば行って帰ってこれるよね…

まさか…事故…!?

僕が不安に思って切っていた携帯の電源を入れると、丁度のタイミングで携帯が鳴る。
相手も何も確認しないまま電話を取ると、相手は知らない女の子で…
やっぱり事故っ!?

『出たアルヨ。この貸しは高くつくネ。』

…何だ…?

「…もしもし?あの…」

『…新にいちゃん…やっと出てくれやしたね…』

そー君!?
なんでそー君が僕に電話なんて…?
それより、さっきの女の子は…?
僕が慌てて電話を切ろうとすると、電話の向こうから切羽詰まった声が聞こえてくる。

『新にいちゃん!切らないで下せェっ!!』

…なんて声出してるんだよ…電話の向こうの顔が想像ついちゃうよ…泣きそうな顔になっちゃってるよね…?
でも…なんでこんな必死に…?

『変な顔ネー!』

ゲラゲラと笑う声がして、すぐに喧嘩が始まる…
楽しそうじゃん…

「…そー君、何かな…?僕忙しいんだけど…」

別に忙しくなんかないけど、そう言って電話を切ろうとする。

『待って下せェ!昨日から新にいちゃんに全然連絡つかねェから…何かあったんじゃねェかって…気になっちまって…無事で良かったでさァ…』

…本当に心配してくれてたんだ…僕が姉さんを心配してるみたいに…心配させてしまった…
でも…その優しさが…今の僕には辛い…

「ごめん、心配させちゃったんだね…大丈夫、忙しいだけだよ。それに、そー君も僕なんかに関わってる暇無いんじゃない?」

『…何がですかィ…?俺は新にいちゃん意外に用事なんかねェ。』

…しらばっくれるんだ…

「昨日、そー君の家の前まで行ったんだ、僕。でもお客さんが来てたみたいだから…」

『昨日…?あぁ、アレは…』

「可愛い彼女だよね。練習通りに上手くできた?でも、男と女の子じゃ色々違うんだよ?」

『は…?何言って…』

「良かったねー、僕なんかが役に立てて良かったよ。兄貴分として。」

『…は…?だから、何言って…』

「もう、電話なんかしないでよね。僕ももうそー君の所には行かないし。じゃあね。」

『新にいちゃ…』

プツリと電話を切ると、そー君の声も聞こえなくなる。
その後は…テレビの音だけが、虚しく響いた…

…これで…良かったんだよね…?
僕は…もう優しいお兄ちゃんなんかじゃいられない…
好きだって…そー君の事が好きだって気付いちゃったから…

ポロポロと涙が又溢れてくるけど…良いよね…?ちょっとだけ泣いても…
テレビの中の笑い声に隠して、声をあげて泣いた。
…ちゃんと泣いたら…振り切れるよね…?


ひとしきり泣いてやっと気持ちが収まった頃には、多毛さんの番組も終わっていた。
やっとすっきりしたけれど、顔…酷い事になってるんだろうな…

顔を洗ってサッパリしたけど、鏡に映る僕の顔は酷いもんだ。
こんな顔…誰にも見せられないよ…

ピンポーン…

…そして、こんな時に限ってお客さんか…僕ってとことん運が無い…
まぁ、こんな時間に来るのなんて宅配便ぐらいだろうし…それなら良いか。

「はーい、ちょっと待ってて下さい…」

僕は、印鑑を持って玄関に走った。





少し前、万事屋銀ちゃん

その日は俺の心のアイドル新八君が、具合が悪くて休み、って事で俺のテンションもイマイチで。
会社中がなんか暗かった。

新八君、大丈夫かなぁ?
そう言えば昨日は腰が痛いとか言ってたもんなぁ…
心配だから、後で外回りのついでに様子見に行っちゃおう!
俺のメールにも返信くれなかったしね…今までそんな事無かったのにさ…
…まさか…本当に誰かにヤられちゃったりして無いよね…
そんな事…ないよね…?

あー!心配だよ!!
早くデスクワーク終わらせてお見舞いに行こうっと。

ソワソワしながらなんとかデスクワークを終わらせると、綺麗な女性がフロア入口に立つ。
誰だろ…?
あ…!新八君が女の子だったらあんな感じかな…?
呑気にそんな事を考えながらその女性を見ていると、あれ…?何か様子が…

「銀さんいらっしゃるかしら?」

にっこり笑ってそう言った途端、彼女の背後に般若が見えた。
えっ!?えっ!?何が!?
社長あの女性に何したのォォォォォォォォォ!?

「お、妙じゃん。新ちゃんど〜した…」

「テメェ!ウチの新ちゃんに何さらしたんじゃァァァァァ!!」

ええええええええええっ!?
『新ちゃん』って事は…新八君の…お姉さん!?

俺が、挨拶でも…と思って1歩近付くと、社長が胸倉掴まれて釣りあげられて揺さぶられたァァァァァァァっ!!

「なっ…なにもしてなぶぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

「じゃぁ誰だ…?ジミーか…?」

ギロリ…とそこいらじゅうに目線を送られて、俺とも目が合う…
それだけで足がガタガタ震えだしてしまう。
ブンブンと首を振ると、フッと視線が逸らされる…

こえー…ちびるかと思った…

「じゃぁ…テメェか…?」

瞬間移動並みの素早さでサブチーフに近付いて、今度は何も確認しないまま、ボコボコにし始める。

「やっ…やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

俺が叫んで駆け寄ると、姐さんがギロリと俺を睨む。
今度は殺意まで叩き付けられて、ペタリと座り込んでしまう。

「ちょ、妙!落ち着けって!!多串君死んじゃうから!!!」

なんとか復活した社長が、姐さんを後ろからはがい締めして取り押さえると、サブチーフがばったりと倒れて動かなくなった。
さっ…サブチーフなら放っといても大丈夫だよね…?
そのまま社長が姐さんを宥めて落ち着かせると、ポツポツと事情を話し始めてくれる。

「新ちゃんの様子が昨日からおかしくって…今朝様子を見に行ったら…ひどく目を腫らしていて…ちゃんと話を聞いたら失恋したって言うから…」

「失恋!?」

「そう。あの子…ココぐらいしか知り合い居ないでしょ…?だから…でも、私の勘違いだったのよね…ごめんなさい…」

姐さんが、肩を落としてしゅんとする。
えー!?新八君が失恋!?
どこの誰だ!そんな勿体ない事したの!!

「妙…新ちゃんだってココ以外に知り合いぐらい居るだろ…それに、この会社には新ちゃんを振るような奴はいません〜」

社長が胸を張って断言するけど…
確かに新八君を狙ってる奴はいても、振るような馬鹿は居ないよな。
俺だって大喜びで首を振るよ!
ヘッドバンキングするよ!!

「…通勤途中とかに電車で逢う女とかじゃないのか…?」

サブチーフが首をコキコキと鳴らしながら言う。
まぁね、普通はそう思うよね。

「そんなんじゃ…分からないじゃない…」

姐さんが肩を落としてしょんぼりする。

「まぁ…新ちゃんもお年頃だしね…そっか…失恋したのか…」

社長がニヤリと笑う。
悪っそうだな…

「だからって…新ちゃんに付け込んだりしたら…許しませんからね…?」

しょんぼりしていた筈の姐さんが、社長の背後に立って又般若を背負う。
すぐに気付いた社長が飛びのいて、ははは…と誤魔化し笑いしてるよ…

わー…困ったな…
新八君とは仲良くしたいけど…姐さんはメッチャ怖いよ…
こりゃぁ大変だ…

「そうと分かればこんな所に用は無いわ。失礼します。」

にっこりと微笑んだ姐さんが、くるりと綺麗に向きを変えてその後は振り返りもしないで帰っていく。

…おっそろしい台風だった…

新八君…明日は出てくるかな…?
出てきたら…俺も頑張っちゃおうかな…?
うん、そうしよう。



宅配便だと思ってドアを開けると、そこには息を切らしたそー君が立っていた。

えっ!?何で…?

すぐにドアを閉めようとしたけど、足を挟まれて閉められない…こんな顔…そー君には一番見せたく無かったのに…

「何で…そー君家に…」

「そんなのっ!新八が変な事言うからに決まってまさァ!電話には出てくんねェし、メールも返信くれないし…なら、逢いに来るしかねェだろィ!!」

「僕はっ…逢いたくなんかない…」

「ウソでィっ!じゃあなんでそんな顔してんでさァ!?」

そんな真剣な顔で…新八…なんて言われたら…
なんで新にいちゃんじゃ無いのさ…
そんなの…揺らいじゃうよ…

「これは…二日酔いで…」

「ウソでィ!そんな…泣き腫らした顔…二日酔いなんかじゃねェ!」

口調はきついけど、僕をいたわるような手のひらが頬を撫でる。
なんで…?何でそんな事するんだよ…
僕は…全てを伝えたくなってしまうよ…
そんな事したら…そー君が困っちゃうじゃないか…

「だって…困らせたくないよ…僕…そー君彼女出来たし…」

「誰でィそれ!俺ァ、何回も何回も言いやしたよね?好きだって。俺が好きなのは…愛してるのは新八だって!」

そんな事…僕を利用する為の方便じゃなかったの…?
だって僕…男だよ…?
そー君よりずっとずっと年上なんだよ…?

でも…

真剣な瞳で見つめられて…そんな事言われたら…
それだけで、心の中がおかしくなるくらい嬉しいなんて…僕はどれだけこの子が好きなんだよ…

「…僕、見たんだよ…?すっごく仲良さそうに頭撫でてて…2人で並んで家に入っていく所…」

…僕は…良いお兄さんでなんかもう居られないんだよ…?
汚い所とか全部見せたら…
そー君、僕の事嫌になる…?

「ハァ?アレがそんな風に見えたのかよっ!?目ェ悪ィだろィ…あぁ、眼鏡だし…」

「眼鏡関係無いだろっ!むしろ、眼鏡のおかげですっごく良く見えたよっ!!」

なんかイラッとして僕が怒ると、びっくりした顔になったそー君が、僕を抱きしめる。
なっ…何を…!?

「アイツぁ俺のライバルでィ…あの日は…学校の用事が有って…仕方なく俺んちに上げただけでィ…それに…頭撫でてなんかいやせん…小突いただけでィ…」

「女の子の頭小突いちゃダメでしょ!?」

「…アレは女の子、なんて可愛いモノじゃねェよ…さっき電話借りた時だって、何個酢こんぶ買わされた事か…」

「…酢こんぶ…?」

「くっせーんだぜ。あんなのと何かする気なんざ起きねェよ。」

ぷぅっと膨れてそー君が言うけど…
僕は…嫌な奴だ…
女の子がそんな事言われてるのに…嬉しいだなんて…

「…女の子の事…そんな風に言うもんじゃないよ…」

なんとか取り繕ってみると、そー君がつまらなそうに僕を見る。
なんか…顔が近い…

「…何でィ…もう新八ヤキモチやかねェのかよ…」

「…そんなの焼かないし…大体、なんで呼び捨てなんだよ…そー君生意気…」

「…恋人になったって思ったんだからしょうがねェだろィ…一杯練習して…やっと呼べるようになったんだから固い事言うねィ…」

「………ちょっと嬉しいとか思っちゃった………」

練習って…なんでそんな可愛い事してんだろ、この子…
僕が赤くなって横を向くと、もっとぎゅっと抱きしめられる。
こんな可愛い事してるのに…男の子…なんだな…包まれる腕の力にぼぉっとしてしまう…

「それって…新八も俺の事…好きだって思っちまって…良い…?」

「…うん…」

頷いてそう言ったら、ふわりと抱きあげられる。
僕よりも全然年下なのに…こんな軽々と抱きあげられると、ちょっと悔しい…

「…新八の部屋、何処ですかィ…?」

「え?2階だけど、何…?」

答えるとすぐに、そー君が階段を駆け上がり、一目散に僕の部屋に駆け込む。

「部屋がどうしたの…?」

訳分からないまま、ベットに降ろされて、そー君が僕に圧し掛かってくる…って…まさか…

「ちょっ…そー君…?」

「やっと両想いになれたんでィ!何もしないでなんていられるかィ!!」

「やっ…ちょっ…そー君っ!僕今変な顔だから!!」

「そんな事ねェやい!新八はいつでも可愛いでさァ!!」

「えっ…ちょっ…ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ…」

ちょっと嬉しかったりして反応が遅れたせいで、もうそー君の下から抜け出せる感じじゃなくなってしまった…
イヤイヤイヤ!しっかり僕!!
姉さんが帰ってくるかもしれないからね!
気付かれたら殺されるからね!2人とも!!

なんとかそー君を止めようとしたけど、何処で習ってくるの!?こんな事…
抵抗しようとしても、がっちり腕も足も押さえられて、その上

「イヤ…ですかィ…?」

なんて悲しげな表情されたら…
逃げられる訳ないじゃん…

僕はそのまま、人生で2回目のえっちをしてしまった…