そして、待ち合わせのコンビニ前に着くと、ちょっと待たせてしまったそー君が僕に気付いてニッコリ笑い、大きく手を振って駆け寄ってくる。
…な…んか…会社であんな事言われたから…変に意識しちゃうよ…
改めて見ると…綺麗…だよね…

「新にいちゃん遅ェよ!…どうかした?顔赤ェよ?具合悪い…?」

僕が変な考えになって赤面していると、そー君が心配そうに僕の顔を覗き込んでくる。

こんな純粋に僕の事慕ってくれてるのに、僕ってばなんて事考えちゃったんだ!!

「ごめんごめん、大丈夫!」

「でも…」

「うん、そー君があんまり綺麗だから、ちょっと照れちゃった。」

僕が正直に言ってそー君の頭を撫でると、顔を赤くしたそー君が僕の手にすり寄ってくる。
嫌がられては…いないんだよね…?良かった…

「そー君、僕まだ食材何も買って無いんだけどさ…この辺にスーパーなんて有る…?」

「おう!こっちでィ!」

大張りきりのそー君に手を引かれて近くのスーパーに行って一緒に買い物をする。
今日の晩ご飯は生姜焼きにしようと思ってるけど、作り置きもしていってあげたいからその分で野菜のコーナーや魚のコーナーも廻っていると、そー君は驚く程好き嫌いが多かった…やっぱり1人暮らしは駄目だよ、この子…

「新にいちゃん、俺コレも喰えねェ…」

「もう!好き嫌いは駄目っ!コレもコレもコレも!食べさせるからねっ!!」

僕がジロリと睨んで言うと、そー君が悲しそうな顔をする。

「えー…無理…」

「無理じゃないのっ!ちゃんと食べないと大きくなれないよ?」

「…俺、新にいちゃんより大きい…」

「…ホットケーキ作んないよ?」

僕がちょっと意地悪を言うと、涙目になったそー君が、しぶしぶ頷く。

「うー…全部ちゃんと食べたら、1コお願い聞いてくれやすか…?」

小さくなって上目遣いで僕を見上げてくるんで、その姿が可愛くなっちゃって、あははと笑ってこくりと頷く。
どうせお菓子も食べたいとかアイス食べたいとかそんなんだよね。

「仕方ないなぁ…良いよ。」

「…絶対ですぜ…?」

「はいはい。」

ちゃんと約束したんで、そー君の嫌いな魚も野菜も沢山買い込む。
一応、アイスとお菓子も買っといたよ。

結構重くなった荷物を2人で持って、そー君の家に帰る。
食事の前に掃除もしなくちゃ駄目だろうな…なんて思っていたのに、そー君の家は意外と綺麗に片付いていた。

「意外…綺麗にしてるんだねー!」

「…ゴミ散らかしとくの、嫌いなんでィ…」

「へぇ、頑張ってるんだね…偉い偉い。」

僕よりちょっと高い位置に有るそー君の頭をぐりぐりと撫でると、そー君は顔を赤くしてそっぽを向く。

「…子供扱いしないで下せェ…新にいちゃんより俺の方がデカイんですぜ?」

「まぁ、身長はね。でも、僕から見たら、そー君はまだまだ子供だよ。そんな事言ってると、今日は野菜メインのご飯にするよ?」

「あー!すいやせんすいやせん!野菜だけなんて勘弁して下せェ!」

「はいはい。」

僕が笑うとそー君も笑う。

早速、持参したエプロンを付けて台所に行くと、台所も綺麗に片付いている。
調理器具も、そこそこ揃ってるよ…

「折角こんなに調理道具揃ってるのに…僕が料理教えるから自炊出来るようになろ?」

「…善処しやす…」

僕が料理を始めると、そー君が後ろをちょろちょろしながら料理する僕を見てる。
あはは、勉強してるのかな?
やる気になってくれて嬉しいよ!

そー君に見えるように何かする度に後ろを振り返って見せてあげると、その度に、おお!とかへぇ!とか言ってる。
この調子なら、すぐに自分で作れるようになるよね!

野菜の煮物にきんぴらごぼうにサラダにお味噌汁に生姜焼き。
イカと魚は味噌漬けにしたし、カレイも煮ておいた。
これで暫くは自炊出来るよね?

今日食べる分をテーブルに運んで、2人でご飯を食べる。
そー君は野菜の煮物ではちょっとお箸が止まってたけど、ぱくぱくと全部綺麗に食べてくれた。
こんなに嬉しそうに食べてくれると、作りに来た甲斐が有ったよ…良かった…

「ごちそうさまでした!」

「はい、お粗末さまでした。」

お行儀よく手を合わせてごちそうさまを言ってすぐに、食器も片付けてくれる。
そのまま食器を洗ってくれるんで、その間に僕は残った野菜の煮物とかきんぴらごぼうをタッパに詰めて、冷蔵庫に詰める。

ちゃんとお手伝いしてくれるから、凄くはかどっちゃったな。

そー君が食器を洗い終わってから、約束してたホットケーキを焼く。
やっぱり焼きたての方が美味しいからね!

「はい、お待たせ。ホットケーキ焼けたよ?」

テーブルに座ってホットケーキの焼き方を見てたそー君の前に焼きたてのホットケーキを置くと、早速メープルシロップをたっぷりかけて食べ始める。
あはは、目キラキラしてる…嬉しそうで良かった。
あーあ、そんなに頬張らなくても盗らないよ!

「そー君、タッパに残った煮物とかきんぴらとか味噌漬けのイカとか魚入ってるからね?」

「ふぁい。」

「暫くはちゃんと自炊するんだよ?」

「ふん。」

夢中でホットケーキ食べてるけど…ちゃんと分かってるよね…?

「じゃぁ僕は帰るけど、ちゃんと戸締りするんだよ?」

「あ!待って下せェ!!俺ちゃんと野菜も全部食べやした!約束…」

…そう言えば…お願い聞くって言ったっけ…

「そうだったね。何?お菓子も買ってきたし、アイスも有るよ?」

「そんなんじゃありやせん!」

なんだろ…妙に力入ってるなぁ…

「違うの?じゃぁお願いって何?」

「それは…」

どうしたんだろ?
何かモジモジしてるよ…

「…又…飯作りに来て下せェ…」

赤くなって上目遣いでそんな事言われると…こっちも照れちゃうよ…

「そんなの…勿論だよ。そんな事お願いしなくったって又来るよ?」

僕がそう言うと、ぱぁっとお日様みたいに笑って安心したように大きくため息を吐く。
そんな顔を見てると、物凄く愛おしくなってくる…

思わずそー君をぎゅうと抱きしめると、そろりと僕の背中に手を回してくる。
そして、そのままぎゅうっとしがみついて体重をかけられるんで、ぱたりと後ろに倒れちゃったよ。

そー君大きくなったからなぁ、僕じゃ支えきれなくなったのがちょっと悔しい…

そのまま僕の胸にすりすりとすり寄ってくる。
…ずっと独り暮らしだったんだもんね…まだまだ甘えたい年頃なのかな…?

ぽんぽんと頭を撫でてあげると、すうっと顔をあげて僕の目を見つめてくる。
…な…なんでそんな真剣な瞳…?

「…又…来て下せェ…絶対ですぜ…?」

「うん、勿論だよ。約束したじゃない。」

「新にいちゃんは…約束守ってくれる人ですよねェ…」

「うん…」

何だろ…?
やけに念を押すなぁ…
僕がじっとそー君を見ながら首をかしげていると、そー君がニヤリと笑う。


…え…?何…?何か今、凄く悪い顔した気が…


突然の表情に僕が呆然とそー君の顔を見つめていると、笑ったままのそー君の顔がどんどん近付いてくる…え…?
そのまま近付いてきたそー君の顔の一部が、僕の顔の一部にぴたりとくっつく。

…って…え…っ…?これって…キス…?

「んっ…んんっ…」