買い物姫とストーカー王子



放課後、パチ恵を捕まえてイチャイチャしようと思ってたってェのに、パチ恵はチャイナと猿飛に攫われていった。
物言いたげなパチ恵の瞳が俺を狂わせる…
気が付いたら、こっそり後を付けていた。

3人は駅に向かい、何処かへ出掛けようとしてやがる…
何でィ、珍しい組み合わせだねェ…
俺の驚異の視力は、パチ恵の持ってる切符の値段をしっかり捉える。
230円か…
とりあえず230円の切符を買って、ヤツラが乗った車両の隣に滑り込む。
きゃぴきゃぴと楽しそうな3人を尻目に、俺は何だか空しくなって来やがった…
何やってんだ?俺ァ…1人の女にこんなにハマったのは初めてだ…
あぁ、アノ笑顔…俺ァ、アノ笑顔に弱ェんだ。
あの、ふわりとした笑顔を見てェ…出来ればいつも。
でも、怒った顔も、テレた顔も、泣き顔も、焦った顔も、どれも好きだ。
どれも可愛い。
初めて出会った時は、こんなに執着するとは思わなかったぜ?
コレはなんだ?運命?
もぅ、一生アイツと一緒に居るんだろうねェ、俺ァ。
ぼんやりとパチ恵を見ながらそんな事を考えてると、3人が動いた。
ココで降りんのか…渋谷…?何でィ、服でも買いに来たのか?
まぁ良い。ココまで来たんだ、最後まで見届けてやらァ。

少し離れた所を歩いて3人を追うと、とあるデパートに入っていく。
やっぱ服か…

するするとエスカレーターを登って着いた先は、下着売り場だった…

イヤ、流石にココに俺が居たらおかしいだろ…どうすっかねェ…
俺ァもう1階上にあがって、エスカレーターが両方見える所に陣取る。
ココなら、ヤツラが帰る時は判るだろ。
偶然を装って、パチ恵を掻っ攫ってやるぜ。

暫くした後、袋を持って頬を染めたパチ恵が上りのエスカレーターに乗り込んでくる。
よし、掻っ攫ってやるぜ…
3人が更に上に行く為に、エスカレーターに乗った数段後に俺も乗り込む。
じわりじわりと近付いていくと、ヤツラの声が聞こえてくる。

「…これで準備は…」

「…でも…沖田君…」

あ?俺…?

「…ドSなんて関係無いネ!パチ恵が告白するヨ?」

…告…白…?

「…でも…折角…が…好きだ…」

「パチ恵さん!そんな事気にしてたら幸せになれないわよ!?」

「そうネ!勝負下着でメロメロにしてヤルとイイネ!」

「…そんな…君はそんな人じゃ…」

…何だ?勝負下着…?誰に…見せるんでィ…
俺はくるりと振り返って、エスカレーターを逆走する。
告白…って…誰にするんでィ…?俺…じゃぁ…無いよな…
俺は…俺の告白は、やっと昨日届いたハズだ…パチ恵も言ってたしな、さっき。
でも、俺ァ関係無いらしい。
誰だ…?誰に告白するんだ?パチ恵…
山崎…は無いな。
土方か?近藤さんか…?伊東さん…も有り得る…それとも他の…?
どっちにしても、俺には関係ねェんだ…俺では…無いんだからな…
俺になら…『告白』じゃなく『返事』だからな…

畜生…畜生畜生畜生畜生畜生…
何でこんなに力が入らねェ…そんなのぶっ潰してやりゃぁ良いじゃねぇか!
こんなの俺のキャラじゃねェだろ?
キャラじゃねェが…パチ恵の本気の泣き顔は見たくねェ…
アイツが幸せになんなら俺ァ…

パチ恵の前から居なくなる。

もぅ…関わるのは止めてやる…
誰とでも幸せになりやがれ…





さっちゃんって凄いっ!
こんな可愛い下着なのに、すっごく安かった!
えへへっ、いっぱい買っちゃった!今月のバイト代はもうピンチだけど、満足っ!

「パチ恵さんいっぱい買ったわね!明日はどれにするの?」

「迷っちゃうよね!どれにしよう…」

「ワタシはぴんくのが好きネ!」

「あ、ブルーのも良いな…」

「やっぱり白でしょ?男の子は白が好きよ?」

「そっかな…」

えへへっ、緊張しちゃうね。

「これで準備も整ったし、後はシチュエーションのおさらいね!」

「アイス食べながらカイギヨー!」

「…でも…沖田君さっき何か言いたげだったよ…?本当は『うっそー!』とか…」

心配だよ…ホントに本気なの…?

「ドSなんて関係ないネ!パチ恵が告白するヨ?」

「うん…でも…折角向こうから好きだって言ってくれたんだよ…?お返事するだけで良いんじゃ…?」

「パチ恵さん!そんな事気にしてたら幸せになれないわよ!?」

さっちゃんが力説する。

「そうネ!勝負下着でメロメロにしてヤルとイイネ!」

「…そんな沖田君はそんな人じゃ…無い事も無いけど…喜んで…くれるかな…?」

「あったり前ヨ!ドSヤロウはエロガキヨ!」

神楽ちゃんがニヤリと笑う。
えっ…エロって…

「そーなんだー、早速使っちゃうんだー。」

「つっ…使うって何っ!?」

「パチ恵はずっと宝の持ち腐れだったネー、やっと使えるアルヨ。」

「かっ…神楽ちゃんっ!」

私が真っ赤になって怒ると、ニヤリと笑った神楽ちゃんがエスカレーターを駆け上る。
私が追いかけると、さっちゃんも駆け上る。
そのまま走ってアイスクリーム屋さんまで行って、アイスを食べながら、作戦会議をする。
えへへ、楽しい…
沖田君…喜んでくれるかなぁ…?
えっ…えっちは怖いけど…断ったら嫌われるのかなぁ…そんな事無いよね?沖田君優しいもん!
大好き、って気持ちを伝えるから…受け止めてね?沖田君…


続く