真面目に授業を終えた俺は、パチ恵が居るはずの図書館へと急いだ。

いよいよメインイベントが始まるんでィ!
心臓が壊れそうに騒いじまう…
やっぱ飯喰った後の方が良いよなァ…レストランで…イヤ、その後どっか行ってからの方が良いのか…?
色々考えてっと、俺の前に誰かが立ちふさがりやがった。
こちとら急いでんだ!誰が…

「よぉ、色男…」

「高杉…?」

コイツ、まだ居たのかよ…それにしても俺に何の用だ?

「昨夜はお楽しみだったんだろ…?今日ぐらいはパチ恵、解放しな…?」

「あ?昨日も今日も明日も、パチ恵が俺以外の男と何かするなんざ有り得ねェんだよ。」

本当ならここで決着つけてェ所だけど、今はコイツと話してる時間すら勿体無ェ。
そのまま高杉の横をすり抜けたってェのに、今度は俺の正面に山崎が現れる。

「皆でお祝いした方がパチ恵ちゃんも喜ぶと思いますけど?仕方ないんで沖田さんも仲間にいれてあげますから。」

「皆ではさっき祝っただろィ。俺、デート有るんで。」

怪しげな笑い顔してんじゃねェよ気持ち悪ィ。
山崎の横もすり抜けると、土方まで行く手を阻みやがった。

「レポートの資料も探さないで喰いモンばっか見てやがったぜパチ恵。本当はデートなんて思ってないんじゃねぇの?俺とは今度駅前のイタリアンに行くぜ?パチ恵。」

多分皆でだろうよ。当日に泣きな!
土方の横もすり抜けようと動くと、いつの間にか全員で俺を囲んでやがった…チッ…面倒くせェけどココは…

「ドSテメェェェ!何で今日パチ恵連れてくネ!?女子会できなくなったじゃネーカ!フザケンナァァァ!!」

俺に向かって飛んできたチャイナをひらりとかわすと、山崎と土方が巻き込まれて高杉が後ろに避けた。
その隙に俺は一瞬でダッシュして、ソイツらを撒いてやった。

そのままのスピードで図書館に向かってっと、途中で銀八に絡まれてるパチ恵を見付けた。

…銀八ィィィ!しつこいんでィ!!

そーっと後ろから近付いてパチ恵の腕を掴んで走り出すと、すぐにパチ恵も一緒にダッシュしてくれた。
そしたらあっと言う間に銀八を引き離す事が出来たんで、そのままダッシュで学校を出てレストラン方面に向かった。

少し離れてからゆっくりと足を止めると、流石に俺達を追って来てるヤツはいなかった。
パチ恵…無理させちまったか…?

「…あー…パチ恵は…皆と誕生日会…したかったかィ…?」

俺と同じくらい友達も大切にしてんのは知ってるんでィ…パチ恵が本当はそうしたいんなら…俺ァ戻ったって良い。
プロポーズはその後でも…

「…それも嬉しいけど…今年の誕生日はトクベツだから…そー君と2人が…良いです…」

真っ赤な顔で照れたように笑うなんざ…まさか…俺の計画バレて…
そのままジッとパチ恵の様子を窺うと、慌ててパタパタと手を振った。

「あ…あのっ!20歳ってキリが良いっていうか!大人になるから…あの…変な意味じゃなくて!」

更に真っ赤になりやした…
え…?もしかして…エロい意味で期待されてんですかィ…?

「あのっ!20歳って…お酒…飲んでも良い年でしょ…?そーくんなら色々美味しいお酒知ってると思って…今日行くお店も可愛いカクテルとか沢山有るってホームページに書いてあったの…山崎君と神楽ちゃんはまだ20歳じゃないから…飲めない人が一緒だと悪いかなぁって…」

「…あー…酒ね…食いしん坊なパチ恵らしいでさァ…」

「食いしん坊じゃないですー!」

一瞬期待しやしたけど…やっぱ、んな事ねェか…
ぷっくり膨れてペしぺし叩いてくんのも可愛いし、プロポーズがばれてた訳じゃねェし、良しとするかィ。

「良いぜ?旨い酒、呑ませてやらァ。」

「期待してます!」

パチ恵の笑顔の為なら、とびっきりの一杯を選んでやらァ。


予約時間までブラブラしてから向かったレストランは、高級すぎねェけど洒落た感じの良い店だった。
土方が言ってた通り、パチ恵は既に何を喰うか決めてたみてェですぐにオーダーは決まった。
思いっきり期待されてたカクテルも、パチ恵が好きそうな甘ったるくて綺麗な色のヤツを選んでやった。

これを喰ったらいよいよプロポーズでィ…
いつにない緊張で、なんか吐きそう…

先に来たカクテルで乾杯して改めて誕生日を祝うと、今日一番の笑顔が俺の鼓動を早くする。
思わず一気飲みしちまったグラスをテーブルに置いた途端、アルコールがグルグルと俺の頭を駆け巡った…

「そー君、コレ美味しいね!やっぱり選んでもらって良かった…」

酔いが回ってるのか、頬を染めてうっとりと微笑む顔を内緒話をするように寄せてくるパチ恵に、俺の何かがぶっ飛んだ。

ポケットに入れてた指輪と婚姻届をテ-ブルに叩きつけて、驚くパチ恵に思いっきり顔を近付けて俺は言ってしまった。


「パチ恵、俺と結婚して下せェ。」


店中が静まりかえってパチ恵の返事を待っている。
ポカン、と驚いた顔をしてたパチ恵が一気に赤くなって、椅子を倒して立ち上がったけど逃がしゃしねェよ。
俺も立ち上がってパチ恵の手をしっかりと握りしめる。
震えちまってるのはご愛敬でィ…


「温かい家庭、一緒に作りやしょう。」

「………はい………」


…はい…はいって言ったよな!?
俺がパチ恵の顔をしっかりと見ると、真っ赤だけど嬉しそうで幸せそうで…

「そー君と一緒なら、出来ると思うから…よろしくお願いします。」

そんな事言われたらもう堪らなくなって。
しっかりとパチ恵を離さないように抱きしめた。


一瞬遅れて店内から拍手と歓声が巻き起こって、俺は色々間違った事に気付きやしたが…
パチ恵がプロポーズを受けてくれたんだから、それで良かったんだと思いやした。





それから数年経って、俺達は無事結婚式を挙げて家族になった。
相変わらず邪魔されまくりやしたが、結局は皆パチ恵の幸せをブチ壊す事は出来なかったみたいでィ。

更に数年経って俺にそっくりな生意気な男の子が産まれ、その後パチ恵にそっくりな可愛い女の子が産まれた。
そう、あの時の夢の通りの家族ができたんでさァ。

「こんな幸せ、一回知っちまったら諦めらんねェよなァ…」

俺がボソリと呟くと、にっこり笑ったパチ恵が俺にもたれかかってきた。
同じようにそう思ってくれてたら良いのにねィ…
想いを込めてパチ恵を抱きしめると、子供達も走ってきて俺達に抱きついてきたんで三人まとめて抱きしめた。


「「おとーさんごくろうさま!」」


そう子供達が言った気がしたけど、二人はきゃぁきゃぁと俺達に抱きついてるんでそんな事ァ無さそうだ。
まぁ、気のせいだったとしても、コイツらが俺達を望んでくれたんだと思ったら悪い気はしねェ。
だから俺ァもう一回力を込めて、温かな幸せを抱きしめた。


END