あ!私解っちゃった。
神威さんの笑顔が私には怖い理由も、あんな事を言ってくる理由も。
全部、神威さんが神楽ちゃんの事を好きすぎるから、だよね!

私が凄く神楽ちゃんと仲良しだから、私に神楽ちゃんを取られちゃうって嫉妬してて笑顔が怖いんだよ!

それに、私に向かってお嫁さんになれっていうのは神楽ちゃんの為、だよね。
私が神威さんのお嫁さんになったら神楽ちゃんのお姉さんになるから。そうしたら家族になるから。

そう思ったら神威さんが凄く可愛く思えてきちゃった。
ウチのお兄ちゃん達もそうなのかな…?

「神威さんってすっごく妹想いのお兄ちゃんなんですね!」

私がクスクスと笑いながら言うと、2人がキョトンと私を見た。
わ、そっくり!

「いきなり何言いだすネ!ワタシのご飯盗るネ、コイツ!!」

「えー?神楽アレ嫌いだよネ?」

「…う………それに!…えーっと…」

神楽ちゃんが神威さんの悪口を考えて唸ってるけど思いつかないみたい。

「仲良しなんだね、神楽ちゃんのお家も!」

「なっ…何馬鹿な事言ってるネ!パチ恵!!」

真っ赤になった神楽ちゃんが私を睨んでくるけど、すっごく可愛いよ!
こんなに照れてる神楽ちゃん、初めて見た!!

「馬鹿な事なんかじゃないよ。だって神威さんが神楽ちゃんを見る目はすっごく優しいもん!ウチのお兄ちゃん達みたいだよ?それに、私にお嫁さんになれって言ってるのも神楽ちゃんの為だよ?私達がずっと一緒に居られるように、って想ってくれたんだよ。そうですよね?」

私がそう言うと、一瞬目を見開いて、そしてニコリと笑ってくれた。
その笑顔は今までのとは違って、神楽ちゃんに向けるような優しい笑顔で…ちょっとだけドキッとしちゃった…

うん、やっぱり良いお兄ちゃんなんだ、神威さんって。
私も仲良く出来たら良いのにな…

「神威さん、私も神楽ちゃんの事大好きです。だから、この先別々の道を進むようになっても、ずっとずっとお友達でいたいです。」

「パチ恵ー!ワタシも!ワタシもパチ恵が大好きヨ!!ずっとずっと友達ネ!」

するりと神威さんから離れた神楽ちゃんが私に抱き付いてくれるんで私も神楽ちゃんを抱き返した。
やっぱり神楽ちゃんは暖かいよ…
同じ中学の子がいない銀魂高校でちゃんとお友達が出来るか不安だった私に、一番最初に声を掛けてくれた女の子。神楽ちゃんと一緒だったから、皆とも仲良くなれたんだ。
大好きで大切で、できることならずっとずーっとお友達でいたい。

そっと神威さんの方を窺って見ると、驚いたような感心したような顔で私達をじっと見ていた。
…怒っては…いない…よね…?


「へー…おさげちゃん…キミなんて名前?」

「え…?えっと、近藤八恵…ですが…」

「ふーん、ハチエかぁ…」

そう呟いてジッと私を見る目が怖い…何…?

「おさげちゃんの方が合ってない?おさげに改名しなヨ。」

「えっ!?しっ…しませんからっ!!」

「えー?その方が似合うヨ?俺ともお揃いじゃん?」

アハハと笑って綺麗なピンクの三つ編みを揺らす神威さんの笑顔が、さっき見たのとも今までのものとも違う気がする…なんだか…色っぽい…?

「おヨメさんはもっと後でも良いや。ね、おさげちゃん、俺のカノジョになってヨ。俺がドS君に勝てば言う事聞いてくれるよネ?」

でも言ってる事は物騒ゥゥゥ!!!

「何でですかっ!?私は総悟君の事が大好きなんですっ!だから神威さんとはお付き合いできませんっ!!」

力の限りお断りしたけど、神威さんには全然聞こえて無い感じだよ!?
何で!?

「えー?フラれちゃったー…まぁ、諦めないけど。これからよろしくネ、八恵。」

トドメのようににっこりと笑った神威さんの目がギラリと光って、気付いたら綺麗な蒼が目の前に…って…!!!

「やらせねーアル!!」

呆然としていた神楽ちゃんが復活して神威さんを後ろに引っ張ってくれた。
それに、私の顔の前にも誰かの手が…

あっ…危なかった…顔、当たっちゃうとこだったよ…


口を押さえてフラフラと椅子に座ると、いつの間にか隣に居た山崎君が前に立ってくれる。
あの手…山崎君だったんだ!凄い、いつの間に!でも助かったー…

「パチ恵ちゃん大丈夫?」

「うん、ありがとう山崎君!でも、ちょっと疲れちゃった…」

私がえへへと笑うと、山崎君もへへへと笑ってくれた。
やっぱり山崎君は良い人だ。一緒に居ると、落ち着いちゃうな。

ケンカを始めた神楽ちゃんと神威さんをそっとよけて、私達はお弁当を食べるために屋上へと向かったのでした。



END