え〜と…何処に有んだ?
頼まれものを探してウロウロしてると、野菜売り場でアイツを見付けた!
こんな偶然アリか!?
こんなチャンス、絶対ェフイになんざ出来ねェ!
そっと近付いて、逃げられないように追い詰めて声を掛ける。
「おっ…チャイナの…」
「え…?あっ!」
ビクリと振り返ってキョロキョロと逃げ道を探すけど、今日こそ絶対逃がさねェ。
「逃げるこたァ無ェじゃねェですか。」
笑顔で逃げ道を塞いで手に持ってたカゴを奪うと、あわあわと取り返そうとする。
「あ…あのっ…カゴ…返して…」
「重そうでィ、持ってやらァ。」
にっこりと王子様スマイルで笑いかけると、赤くなってぺこりと頭を下げる。
「あの…有難う御座います…やっぱり沖田君は優しいですね…」
「俺の名前…知ってんのかィ…?」
意外に思って俺が聞くと、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
そんな姿も可愛い…
「あっ…あの…神楽ちゃんが…」
「あぁ、チャイナねェ…ヘンな事言われてんだろィ?」
「そっ…そんな事無いですっ…少しだけです…あ…!」
やっぱり何か言われてんだな、俺…
ここらでちょいと好感度アップといきやすか。
「ま、アイツとは喧嘩しかしてやせんから、何言われても仕方ねェや。アンタは話半分で聞いときなせェ。」
そう言って、姉さんにしか見せない顔で笑うと、更に赤くなる。
あぁ畜生!可愛いんだよ!!
「で、アンタにヒトツ聞きたいんですがねィ…唐辛子とタバスコってのは、何処に有るんですかィ?」
「…凄い買い物ですね…こっちです。」
きょとん、と俺を見た後零れた笑顔は最高に可愛くて、俺の顔も赤くなっちまってるだろうな…
でもまぁこの反応は…少なくとも嫌われちゃいねェよな…?
「土方先輩への悪戯に使うんですか?」
興味深げに俺に聞いてくるけど、今は振り返らないでほしい。
こんな顔…カッコ悪くて見せらんねェよ。
首を掴んで押していくと、ひゃぁ!とか叫んで早足になる。
「今日は姉さんのおつかいでィ。」
「おつかい…ですか?えらいんですね!」
偉いって…子供かよ。
「そんな事ねェよ。お前さんもおつかいで?」
「いえ、家で料理は私の担当なんです。晩ご飯の買い物です。」
「へェ、偉いねィ。」
料理すんのか…喰ってみてェな…
「そっ…!そんな事ないです!!お姉ちゃんの方が大変で…私が出来る事なんか少ししか無くって…」
「姉さん…?」
ぽつぽつと話しながら買い物を済ませて、大江戸ストアの前でアイツと別れる。
本当なら荷物持ってやる、って言って家の前まで送りてェけど、流石にそこまでやったら引かれそうだ。
それはまぁ、追々…
毎日買い物に来てる、って言ってたしな。
明日から毎日通いつめてやるぜィ!
◆
それから毎日、俺は待ち伏せして大江戸ストアに行った。
いつも3時半から有るタイムセールにアイツはやってくる。
だから、俺も毎日その時間に合わせて大江戸ストアに通い詰めた。
偶然を装って、その度に少しずつ話をして…変な人とか言われながらも、やっと向こうからも声を掛けてくれるようになった。
ここまで長かったぜィ…やっとスタート地点に立った気分でィ。
さて、こっからどうやって攻め込んで行こうか。
そんな事考えてたある日、久し振りに近藤さんから遊びの誘いがかかった。
近藤さんは中学の時からの先輩で、すっげェ良い人で、俺が姉さん以外で唯一心を許してる人だ。
最近はおっそろしいゴリラ女に惚れて毎日ストーカーして殴り飛ばされてる、って聞いてたからあんまり会って無かったけど、会えるのはスゲェ嬉しい。
かなり楽しみにして待ち合わせのカラオケボックスに行くと、そこには何故かアイツも居た。
え…!?何でだ!?
真っ白いワンピースがものっすごく可愛いじゃねェか!!
「え!?沖田君…?」
「こっちが吃驚でィ。何で志村…?」
「私はお姉ちゃんと神楽ちゃんに連れてこられたんです…沖田君は?」
あぁ、チャイナ…と…あれ…?姐さん…?
まさか…志村ってゴリラ女の妹なのかよ!?
「あ…あぁ…近藤さんに呼ばれて…」
「えっ!?沖田君、近藤さんのお友達…?」
…ヤベェ…姐さんの妹ってこたァ…ストーカーの仲間だと思われ…
「あー…えーと…」
俺が答えあぐねてると、にこりと微笑んだ志村が俺の耳元に口を寄せる。
なっ…!?
「あのね、お姉ちゃん本当は近藤さんの事好きだと思うんです!でも素直じゃないから…やっと今日お誘いに乗ったので、私頑張ってお姉ちゃんと近藤さんをもっと仲良くさせたいと思って…沖田君も協力してくれませんか…?」
ドキドキして上手く脳味噌が働かねェけど…
とりあえず、頷いてみた。
「良かったー、1人じゃ上手く出来るか心配だったんです!沖田君が一緒なら心強いです!」
えへへ、と笑った顔が近いのが落ち着かねェ…
でも、ラッキーだろコレは俺にとっても。
中に入って部屋に案内される間も、部屋に入ってからも、志村は俺にベッタリとくっ付いてくる。
チャイナにも声を掛けてたから、姐さんと近藤さんを一緒にする為なんだろうけどちょうラッキーだ。
浮かれた気分で、ジュースみたいな顔をしてこっそり酒を注文する。
志村が隣に居て、近藤さんは幸せそうで。
良い気分で聞いてっと、御世辞にも上手いとは言えない志村の歌も可愛らしく聞こえる。
だから、いつもは歌わねェけど、酔いも手伝ってハイになった俺は、志村に向かってラブソングなんかを歌ったりもした。
「沖田君、歌上手いですね!」
なんて志村がうっとりと言ってくれたら、調子に乗っちまう。
何曲か歌ったら、近藤さんも土方も、チャイナまでもが驚いてやがった。
歌う度に喉も乾くんで、何杯か酒を注文してっと、志村がおずおずと俺に聞いてくる。
「オレンジジュース…そんなに美味しいですか…?」
じーっと見つめられると、変な気分になっちまうぜ…?
「…飲んでみやすかィ…?コレァまだ俺口付けてやせんぜ?」
新しく運ばれてきたのを差し出すと、志村が凄く嬉しそうに笑って両手で受け取る。
酒だけど…まぁ、こんぐらいならジュースみたいなもんだよな。
「有難う御座います!じゃぁ頂きます。」
コクコクと喉が動くのが色っぺェ…しゃぶりつきたい…
「なんだか…変わった味がしませんか…?」
首を傾げると、そのまま俺の方に倒れ込んでくる。
な…っ…!?
「ありぇ〜?なんらかおかしいれす〜」
「おい志村…大丈夫ですかィ?」
身体がものっスゲェ暑い…まさか…こんだけで酔っ払った…?
「らいじょ〜ぶれす!」
ふにゃりと微笑んで、俺の服にぎゅうっと掴まってぴったりとくっついてきやがるし!
…心臓の音…聞かれちまう…
「志村…」
「おきたくん…」
甘い匂いに誘われて、そーっと腕を回すとスゲェ柔らかい…
きっす…してェ…
そっと、そっと顔を近付けると、甘ったるい匂いがしてきやがる…
あと少し、って所で志村がじっと俺を見る。
あ…
「ぎもぢわるいれす…」
「うわっ…ちょっ!!オイ、待てよ?チャイナ!!姐さん!!!」
慌てて志村をトイレに連れていくと、姐さんとチャイナが個室に連れ込んだ
大丈夫なのか…?
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