久し振りの遊園地は凄く楽しくて!
何より、大好きな人とのデート…って思うと嬉しくてしょうがない。

こんなにずっと沖田君と2人っきりなんて初めてだし。
今日の沖田君はいつもよりずっとずっと優しい。
それに、手を繋いでるだけでも恋人、って感じだったのに、私があんまり転ぶから、うっ…腕なんか組んでくれて…
もう、目茶苦茶恋人感アップでドキドキしてもっと転んでしまいそうです…

皆と一緒も楽しいけれど、やっぱり2人の方が嬉しいな…
だって、いっぱいお話できるし、いっぱい沖田君のお話が聞けるから!
クラスの話とか、お姉さんの話とか、好きな物の話とか…
いつもは聞けないようなお話が聞けて、沖田君の事がもっといっぱい分かったような気がする。

それに、カッコいい私服姿も見れたし…
制服の時だってカッコいいけど、私服の時はもっとカッコいい。
それに…今日の姿は皆と出かける時とは全然違って…デートだから…おしゃれしてきてくれたのかな…?とか…
私ばっかりが張り切っちゃって、どうしよう、って思ってたけど…
少しは沖田君も意識してくれたのかな…なんて…
そうだったら良いな…

「お〜?総悟じゃねぇか。何だ〜?デートか〜?」

突然後ろから声がかかる。
あ…

「とっつあん…?」

「あ…松平先生…」

「ん〜?お〜、お前近藤か〜?馬子にも衣装たぁ、良く言うじゃねぇか〜」

松平先生がくしゃくしゃと頭を撫でてくれる。
…ここで松平先生に会うなんて意外…
先生も遊園地好きなのかな…?
されるまま撫でられていると、沖田君が先生の手を除けて髪を直してくれる。

「とっつあん!パチ恵は元々可愛いんですぜ!?そんなの俺だけが知ってれば良いんだけど…」

「あ〜ん?ガキが生意気…」

「松平先生、見失いますよ?」

「おっとそうだった。んじゃ〜な〜、明るいうちに帰れよ〜?」

「それじゃあ又学校でね。ちゃんと楽しんで帰る事。」

「はい!吉田先生。」

…何であの2人が一緒に遊園地…?
仲良いのかな…?
ぼーっと見送ってると、ぐっと手を引かれてしまう。

「次は何乗りやすか?メリーゴーランドにコーヒーカップに…ゴンドラクルーズ辺りにしやすか?」

私に気を使ってくれてるのか、沖田君はさっきから大人しい乗り物ばっかりを選んでくれる。
クマとか人形とか可愛かったけど…
私結構絶叫マシーンとか好きなのに…大丈夫なのにな…
沖田君、そういうのの方が良いんじゃないかな…?

「どうしやす?パチ恵は乗りたいの無ェんで?」

にっこり笑って首を傾げられたら、ステキすぎて足の力抜けそうだよぅ…
私に優しいのも良いけど、沖田君にも楽しんでほしいよ!

「あのね、私アレに乗りたい!」

私が指差したのは、この遊園地で一番のジェットコースター。
ちょっとスカートが心配だけど、ちゃんと押さえてたら大丈夫だよね…?

「…パチ恵…ちゃん…本当にアレに乗りたいんで…?」

「うん!私絶叫系好きだもん!!」

「…んじゃ、行きやしょうか…」

にっこりと笑って沖田君が私の手を引いてくれる。
折角2人で来たんだから、沖田君にもいっぱい楽しんで欲しいもん!
喜んで…くれるよね…?



「ミツバ…総悟…絶叫系は…」
「あら、そう言えば。小さい頃にはしゃぎ過ぎて、ベルトをしないで乗って空を飛んでから苦手ね。」
「飛んだ!?」
「その割には頑張ってるわね。プラス10点。」
「あ…フラフラしながら次の絶叫マシーンに行ったわよ?」
「そーちゃんファイト!」
「ちょ!総一郎君顔がだんだん土気色になってきてんじゃね?アレ…」
「…誰か止めた方が…良いんじゃねぇか…?」

「お〜う、お前ら保護者会か?」
「お、とっつあん!」
「こんにちわ。」
「…松陽先生…?」
「ウチの栗子がデートなんざぬかしやがってな?俺も保護者会よ〜う。」
「僕は呼び出されました。」
「こんな人数居んだ、何人か俺の方に来〜い!」
「え!?ちょ…とっつあん!?」
「何でワシが…」
「離せ辰馬!!ちょ…パチ恵が…」
「とっつあん離せ!ちょ…晋助テメェも来い!!」
「…頑張れ十四郎…親父…銀八………お義父さん…」
「ふーざけんなァァァァァァァァァ!!!」



沖田の顔が、土気色を超えた頃…やっとパチ恵がソレに気付いて…今、2人はベンチに座って休憩を取っている…
パチ恵…膝枕なんざ、するんじゃねェよ…
沖田の野郎…あの柔らけェフトモモに頭乗せやがって…殺してェ…

「おや、晋助は良いお兄ちゃんなんだね。」

ギリギリと呪いを投げつける俺を見て、松陽センセーが笑う…
やっぱりこのセンセーは苦手だ…調子が狂う…

「…そんなんじゃ…ねェ…」

「照れる事無いよ?兄妹想いだなんて、良い事じゃないか。」

ニコリと微笑まれて、頭なんか撫でられたら…どうして良いか解らねェ…
俺が反論出来ねェセンコーなんて、今迄1人として居なかったってのに…不思議なヒトだ…
まぁ、高校に入って、このセンセーには色んな事を、教わったから…
このヒトが居なかったら、親父に素直になんか、なれなかった…
このヒトが居なかったら、十四郎と一緒の家になんか、居られなかった…
全部、このヒトのおかげだと、俺は思ってる…

「あ!あの2人が移動を始めたわよ…レストランの方ね。辰馬…あら?」

「松平に連れて行かれた…娘のデート邪魔すんのに人手が足りねェって…」

キョロキョロと辺りを見回す音女さんに、事情を説明する…

「なんだ残念。アイツにお昼奢らせようと思ったのに。じゃぁ、銀八…も…?」

「十四郎と…近藤も連れていかれた…」

「えー、お財布みんな持ってかれたのー?…で…?何でこの先生が残ってるの…?」

音女さんが胡散臭げにセンセーを見る…
それは…

「生徒が心配でしたから。」

にっこりと爽やかに微笑んでるけど…松平に付き合うの、面倒だったんで押し付けたんだよな…
俺は、このヒトのこういう所も尊敬している…

「うーん、アイツら煩いから居ない方が良いか。先生が居たら、晋助も無茶しないし。」

ねー?晋助?とか…見抜かれてやがる…
いよいよ俺は、動けなくなった…

そんな俺を見越したかのように、沖田とパチ恵が楽しそうに顔を寄せ合う…
そんなに近付く理由を教えろ…
たいした理由じゃなかったら、沖田殺す…

「こらこら、晋助殺気が出てるよ?可愛いものじゃないか。あの年頃の恋愛ごっこなんてすぐ駄目になるんだから、束の間の幸せぐらい許しておやりなさい。」

にこにこと笑いながら、恐ろしい毒舌を吐くセンセーを、女3人が信じられないモノを見る様な目で見ている…

…センセーのこんな所も、俺は結構気に入っている…なんか、カッケー



「…沖田君、ごめんね…まさかそういうの苦手だなんて思わなくって…」
「………」
「もう少し休む…?具合…良くならない…?」
「…俺の事『総悟』って呼んでくれたら治りそうでィ…」
「え…あぅ…う…そうご…くん…」
「………腹…減りやしたね!お、あっちにクマのレストラン有りやすぜ!」
「くま…好きなの?…総悟君…」
「おっ…おう…!…なんか…照れやすね…」
「…総悟君が呼べ、って言ったのに…」
「…んじゃ、慣れるまで、ずっと呼びやがれ。」
「…ずっと慣れないかも…」
「じゃぁ一生呼びやがれ。」