side 十四郎


これは確実にヤベェ…
本物の妹だってぇのに、俺はパチ恵に惚れちまったらしい。

大体なぁ!なんでアイツはあんな可愛いんだ!?反則だろ?
そりゃぁもう、ひと目見た瞬間から惚れるって!
あんな笑顔振り撒かれたら、ヤベェだろ、マジで。
その上兄貴だからって警戒心が無さ過ぎるってぇの。

風呂上りにパジャマでウロウロすんな!
俺に抱きついてくんな!
おっ…おやすみのチューとかすんな!

押し倒すぞ、そのまま…俺の理性の限界を試してんのか?アイツは…
って、全部天然でやってんだよな…俺はアイツが恐ろしいぜ…

そんなパチ恵も高校生になった。
本当なら女子高に叩き込みたい所だが、アイツは銀魂高校に入学しやがった。
あんな狼の巣に入っちまったらヤベェだろが…
でもまぁ、俺と晋助が居るからそうそう手ぇ出してくる奴は居ねぇだろ。
登下校も、俺達でガッチリガードするからな。

…と思ってたのに、パチ恵はいきなり1人で登校しやがった…

「子供じゃないもん!」

なんて言ってたが、子供じゃないからこそ心配なんじゃねぇか…
まぁ…そうそうアクシデントなんざ、ねぇだろうけど…心配でハゲるぞ、俺…
次の日は、なんとか押し切って一緒に登校したけど…途中でなんか見た事有るヤツが現れた。

「あ!沖田君っ!おはよう!!」

嬉しそうに笑ったパチ恵が、ソイツに向かって駆け出す。
…おきた…?沖田って…あの茶髪…アレぁ…

「…総悟か…?」

「おっ、土方さんじゃねェですかィ…あぁ、今は坂本さんでしたか。」

ニヤリ、と嫌なツラで笑いやがる…なんで総悟がパチ恵と仲良く話してるんだよ…

「あれ?沖田君、十四郎お兄ちゃんと知り合い?」

「おう、近藤さんの…」

「あ、そうか!沖田君おとーさんのお友達だもんね!十四郎お兄ちゃんの事知ってるよね!」

にこにこと笑い合う2人に置いて行かれた感満載だ…

「総悟…オメェなんでパチ恵の事知ってんだ…?」

「あー、挨拶まだでしたねィ。俺ァ近藤とは同じクラスでさァ。よろしくお願いしまさァ、お義兄さん。」

…コイツ…お義兄さん、を強調しやがった…
まさか総悟もパチ恵狙ってんじゃねぇだろうな…

「十四郎お兄ちゃんってばすっごく心配症なんだよ?沖田君なんとか言ってあげて?」

ぷぅ、と膨れてパチ恵が総悟の腕を掴む。
…顔赤くしてんじゃねぇよ、総悟の野郎…

「近藤はうっかりさんだからねェ、俺も心配でさァ。」

「そんな事ないもん!」

「有るだろィ。昨日だって転んで俺と…」

「わーっ!わーっ!!」

…すげぇ楽しそうじゃねーか…
大体昨日って何だ?2人だけで判ってて…なんかムカツク…

「総悟テメェ、パチ恵に何かしたのか…?」

俺がガン飛ばしても、総悟はどこ吹く風で瓢々としやがって…うすら笑いまで浮かべてやがる…

「坂本さん、知りたいですかィ?近藤が俺の…」

「わーっ!!沖田君のイジワルっ!」

大慌てで涙目のパチ恵が総悟の口を両手で塞いだ。
手っ…手が唇に当たってんじゃねぇかっ!!
ムカツいて、ぐいっとパチ恵を引き寄せると、パチ恵は大人しく俺の腕の中におさまった。

「なんでィ、言いふらしてェ所だけど…そんなに嫌なら2人だけの秘密な。」

涙目のパチ恵が、にっこり笑ってこくりと頷く。
…それはそれでムカツクな…
後で総悟に聞いてやろう。
ニヤニヤ笑いの総悟を置いて、パチ恵の手を引いて学校に向かう。
あ…手、繋いじまった…
でも…パチ恵も嫌がってないし…アリなんじゃねぇ?コレ…

「…十四郎お兄ちゃん、後でこっそり沖田君に聞いたりしないでね…?」

真っ赤なままのパチ恵が上目遣いで釘を差してくる。
なんでそんなに隠したいんだ…?

「安心しなせェ、俺ァ口が固ェよ。」

「煩ぇ総悟!んな事言われねぇでもしねぇよ、俺は。」

「へいへい。」

うっそりと俺達の後ろを付いてきていた総悟がちゃかすんで言っちまったけど、本当は気になる…
でもまぁ…もう総悟にゃぁ聞けねぇな…

「えへへ、だから十四郎お兄ちゃん大好き!」

にっこり笑って俺の腕に抱きつかれっと…もう何も聞けねぇ…大好きだってよ…

そのまま俺らは、幸せを噛み締めながら、学校までゆっくり歩いて行った。