仕方ねぇだろ、なんだあの柔らかい生き物は。
ちょっと触ったら壊れるんじゃねぇか!?
ちょ…俺が護ってやらなきゃ駄目じゃね?駄目なんじゃね!?

「…パチ恵…困った事が有ったら俺に言え。お兄ちゃん…が…護ってやる。」

…は…?
晋助が…お兄ちゃんんんんん!?

俺が吹き出すと、晋助が睨む。
そのまま向きを変えて掴みかかりに来る直前、晋助に何かがぶつかっていく…パチ恵!?
嬉しそうに笑いながら、晋助だけに、ぎゅうぎゅうと抱きついてやがるゥゥゥゥゥゥゥゥ!!

「有難うございます晋助お兄ちゃん!すっごく嬉しいです!!でも私はちえです。」

真っ赤な顔でえへへ、と見上げるパチ恵は、もうそれだけで最終兵器だと思いました。作文んんん!?

「…おっ…おう…」

ほのぼのと頬を染め合う2人を見てるとなんでかムカツク。
晋助笑えてねぇよ。顔引き攣ってるよ。
いつもに増して凶悪面になってんじゃねぇか、気付けパチ恵。

あんまりにもムカついたんで、ちいさいパチ恵を引っ張って抱き寄せる。

「晋助は怖いぞー、顔見てみ。ってか近寄ったら妊娠するからな、こっち来い。困った事が有ったら俺に言え。」

俺がふふん、と笑いながら晋助を見ると、人殺しそうな顔でこっち見てやがる。
その顔パチ恵に見られやがれ!

「十四郎お兄ちゃんも有難う御座います!でも妊娠はしませんよ?だって赤ちゃんは木の股にお祈りしたらコウノトリが運んでくるって近藤さんが…」

「…パチ恵いくつだ…?」

呆然とだいぶ下に有る顔を見つめると、むぅ、と膨れたパチ恵が俺を睨む。
そんな顔も可愛い…

「ぱちえじゃないもん、はちえだもん!16歳です。高1です!」

「何いっ!?」

俺が慌てて離れると、パチ恵が不思議そうな顔をする。

「何ですか?あ!中学生ぐらいに思ってましたか?えへへー、高校生ですよ?私。」

何が自慢なのか、自信満々で胸を張る。
…小学生ぐらいかと思ってた…

「…って!えへへー、じゃないだろうが!そんな大きくなって気軽に男に抱きついたら駄目だろうが!!」

「そうだ、駄目だ。」

「…だってお兄ちゃんなのに…駄目…?」

説教モードに入ろうとした俺たちに、パチ恵が上目遣いで首を傾げる…
コイツ…ワザとか…?

「だっ…!」

駄目だと怒鳴ろうとしたら、ちょっと涙ぐんだ瞳とかち合う。

…そんなの…
…そんなの……!



「…家の中だけだぞ…?」

「…皆居る前なら…」

2人とも妥協しちまった…
無理だ!この目には逆らえない!!

「おーい、待たせたのう。明日から3人とも同じ高校ぜよー」

馬鹿親父が大人しいと思ったらなんか変な事言いだしたぞ…?

「何言ってんだ。俺と晋助は高校違うだろ。」

「転校させた。」

「はぁ!?んな勝手に…」

「3人一緒の方が安心じゃろー?なぁー?八恵?」

「はい!嬉しいです、お兄ちゃん達と一緒の学校!」

馬鹿親父とパチ恵が手を取り合ってきゃっきゃっとはしゃぐ…

「明日から銀魂高校じゃー!」

「「はぁ!?銀魂だぁ!?」」

「決定じゃき。」

文句を言おうとする俺たちに、やけに真面目な声の親父が言い放つ。
…駄目だ…
こういう時の親父はテコでも動かねぇ…

「よろしくお願いします!晋助お兄ちゃん!十四郎お兄ちゃん!」

ひどく嬉しそうなパチ恵が、俺たちの腕に掴まってくる…

…パチ恵が嬉しそうだから…

まぁ、良いか…



END