「とっりにーくにっくにっく♪」
「タっマネーギネーギネーギ!」
「マぁーっシュルウムー!」
「ぐりーんぴーすー!!」
「たっまご♪たっまご♪」
2人がおかしな歌を歌いながら、着々とオムライスの材料をカゴに入れていく。
それにしても意外…
「2人とも、好き嫌い無いの…?」
「おう!何でも喰えまさァ!」
「食べ物は全部好きヨー!」
にこにこ笑いながらそんな事言ってるけど…
この2人なら、私の料理でも大丈夫かな…?何でも食べれる、って言ってるし…
…うん…出来るだけ頑張ろう…
そうして連れて行かれた沖田君の家は大きくて。
…本当に王子様…?
「お邪魔します…」
そっと挨拶だけしてキッチンまで引っ張られて行くと、キッチンも大きくて使いやすそう…
お姉さんってしっかりした人なんだろうな…
「早速作って下せェ!道具は…えーと…包丁にフライパンとボウルとさいばしと…泡立て器要るかィ?」
沖田君が私にエプロンを渡して、さくさくと道具を用意してくれる。
…なんでこんなにすぐ出てくるの…?まさか…沖田君も料理するのかな…?
「泡立て器は要らないよ…それより冷ご飯は…?」
早速冷蔵庫を覗かせてもらったけど…肝心のご飯が無いよ。
「は?オムライスだろィ?ピラフじゃねぇか。」
「…ピラフ…?チャーハンでしょ…?」
…なんか、話が噛み合って無い…
「…えっと…私が知ってるのはそんな本格的なのじゃないよ…?」
じーっと見つめ合うと、お互い気まずい…
「そんなのどっちでも良いアル!早く作るネ!!」
そう言って、神楽ちゃんがドスン、と居間のソファに座ってテレビをつける。
お腹が空いてきてるのか、すっごく機嫌が悪くなってきてる…早くしなきゃっ…
私があわあわしてると、沖田君がはぁ、と溜息を吐く…あ…呆れられちゃったかな…
「…仕方ねぇ…ピラフは作り方教えやす。パチ恵、始めるぜィ。」
自分もエプロンをつけて、沖田君が動き出す。
その動きは流れるようで…何!?この人本気で無敵…?
言われるままに材料を切って味付けしていく。
その間に沖田君も材料を用意してくれたりするけど…上手い…
野菜を切るのも卵を割るのも凄く綺麗…なんか、自信無くすよ…
「…沖田君凄いね…上手…」
「そうかィ?ウチの姉ちゃんの料理は激辛だからな…俺もちょいと料理はするんでィ。」
にこりと笑われると、心臓がはねる…
良く見たら…エプロン姿で一緒に料理なんて…旦那様みたい…
そんな事考えてたら、どきどきしてきたよっ…
あわてて目を逸らして料理に集中すると、すぐにピラフが出来た。
うわぁ…ちゃんとチキンライスだ…
それをお皿に盛りつけると、割ってあった卵を渡される。
「パチ恵、卵焼いてって下せェ。俺ァスープ作りまさァ…って…なんか新婚みてェだな…」
頬を染めてそんな事言われたら…同じ事考えてくれたんだって嬉しくなってしまうよ…
「…うん…卵焼き…つくるね…?」
「おう…頼まァ…」
カチャカチャと卵を混ぜて焼きあげてチキンライスの上に置く。
…割る、って言ってたっけ…それって何の意味が有るんだろ…?
「沖田君、卵焼き乗っけたけど…割ってどうするの…?」
私が不思議になって沖田君に聞くと、卵焼きの乗ったチキンライスを見た沖田君が引きつり笑いを浮かべる…あれ…?なにか間違えた…?
「これァ…焼き過ぎでィ。貸してみなせェ…ほら、こうやって…」
沖田君がちゃちゃっとフライパンでオムレツを焼いて、チキンライスの上に置いて切り目を入れるとトロッと広がる…
うわ…凄い!!美味しそう…
そのままもう1つ分も沖田君が焼いてくれて、綺麗なオムライスが出来た。
せめてソースぐらいは…
ケチャップとソースと塩コショウにちょっとだけ醤油を垂らして…うん、美味しくなった。
それをオムライスにかけて、出来あがり。
「…卵焼きの…私が食べるね…」
食卓に運んで私がカチカチの卵のを取ると、焦った沖田君がソレを奪っていく。
「何言ってんでィ!パチ恵の手料理は俺んでィ!!」
そんな必死にならなくても…でも、嬉しい…
有難く美味しそうな卵の方を貰って3人で食べ始める。
…うわぁ…美味しい…!
「沖田君…このオムライス、すっごく美味しい…!ふわふわの卵が凄いよ!!」
「そうかィ?俺ァパチ恵のソースが決め手だと思いやすぜ?」
「そんな事無いよ…沖田君の方が凄いよ…」
「いや、俺の味付けと違ェもん。俺ァこっちの方が好きでィ。」
「…有難う…」
えへへ、と笑うと沖田君も笑ってくれる。
なんだか凄く幸せ…
「ゴチソーサマネ!パチ恵もドSもスゲーナ!旨かったアル!!」
「あ?俺ァ無敵でィ。」
ふふん、と胸を張る沖田君を尊敬のまなざしで神楽ちゃんが見る…珍しい…
でも、本当に美味しかった!
「ご馳走様でした…やっぱり沖田君凄いよ…こんな美味しいオムライス、初めて食べたよ…」
私もちゃんと感想を言うと、得意気な顔をした沖田君がニヤリと笑う。
「惚れ直しやした?」
「…うん…」
私が珍しく素直に肯くと、沖田君が赤い顔でにぱーっという音でもしそうな顔で笑う…可愛い…
「俺ァ毎日パチ恵の可愛さに惚れ直してやすけどね。」
そんな笑顔のまま、口説き文句を言われたら…これ以上無いぐらい顔に血が上っちゃうよっ…熱い…
「わかったネ、黙れよバカップル。」
間に挟まれた神楽ちゃんが、ものっ凄く冷めた目で見てるよ…っ…うわぁっ…恥ずかしい…
照れ隠しで食器を集めて後片付けすると、沖田君も手伝ってくれる…やっぱり優しいな…
「…パチ恵…」
「え?何?」
突然呼ばれたんで横を向くと、ちゅ、と唇を奪われる…
ひゃぁっ!
「旨い飯ご馳走さん。今度は二人っきりでパチ恵の得意料理ご馳走して下せェ。」
にこり、と笑われると…断る理由なんか無いよね…
「うっ…うん…」
迷わず返事をしたけど…沖田君の方が料理上手だもん…
私もちゃんと練習しなきゃね!
そう心に決めたのでした。
END
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