26・信じられない程



ふらりふらりと散歩の途中、この時期いつも白い花が咲いている並木道を通りかかった。
ちょっと風が吹いているだけだってぇのに、ひらりひらりと舞い落ちる花弁がまるで雪のようで、なんだか不思議な気分になる。
こんな時期に見る雪なんて、中々おつなもんですねぇ…
ま、本物の雪じゃぁねぇけどな。

あぁ、そういやぁ、新八は雪が降ったら楽しそうにくるくる回ってたっけ…
新八と一緒に、この景色が見てぇや…

後で新八をかっさらってこようか。
あぁ、でも、今、この時に一緒に見れれば良かったのにねぇ…

柄にもなく風流な気分でゆっくりと並木道を歩いていると、並木道の向こう端に、阿呆みたいに舞い散る花弁を見上げる新八が見えた。

はてさて、新八は俺に気付くかねぇ…
俺が立ち止まって、花弁と戯れる新八をのんびりと眺めていると、ふとこちらを見た新八がにっこりと笑う。

「沖田さんっ!?凄い!今丁度沖田さんに逢いたい、って思ってたら逢えた!」

小走りで俺に駆け寄ってくる新八に、白い花弁がくるくるとまとわりつく。

「俺も丁度、新八に逢いたいと思ってた所でさぁ。」

新八の黒い髪に付いた花弁は、溶けない雪のようで綺麗だけれど…俺以外が新八に触れているのはなんだかシャクにさわるんで、摘んでよける。
俺の隊服に積もった花弁を、新八がぱさぱさと払ってにっこり笑う。

「「雪みたいな花の中を、一緒に歩きたいと思って…」」

何でィ…同じ台詞、言っちまった…
新八が、赤くなってあははと笑う。

「凄いっ!同じ事考えてた!」

「以心伝心でさァ!」

にこりと笑い合い、どちらともなく手を繋いで歩きだす。
何を話すでもなく、ナニをしている訳でもねぇのに、信じられないくれぇ幸せだ。

「何か良いですね、こういうの。信じられない程幸せです。」

あぁ、又同じだ。
でも、同じ気持ちだなんて後から言うのもシャクなんで、隣を歩く真っ赤な頬に口付けた。


END


雪のように降り注ぐ花は、アカシアの花で。