22・行事



今日は節分です。
僕の家では、父上が生きている頃からずっと豆まきをしているので、やらないと何かすっきりしないんです。
なので今年は万事屋にも豆を持ちこんで、皆と豆まきをしようと思います。
鬼のお面も用意したし…銀さんがソレを被って鬼の役をやってくれて、準備万端、豆まきの開始です。

「新八、これ食べていいのカ?」

神楽ちゃんはすっかり豆を食べる気満々で…

「違うよ、コレは鬼を祓う為に部屋に撒くんだよ。銀さんが鬼の役やってくれるから、銀さんにぶつけるんだ。こんな感じで…鬼はー外ー!」

僕がぱらぱらと銀さんに豆をぶつけると、銀さんがうぉー!って言いながら逃げてくれる。

「わかったヨ。オニはーソトー!」

びしっ、ずびしっ、びしぃっ

神楽ちゃんが投げた豆が、銀さんにめり込む…

「神楽ちゃんっ!思いっきり投げちゃ駄目ぇーっ!!そっと!そっと投げてぇぇぇぇぇっ!!銀さん死んじゃうっ!!」

崩れ落ちた銀さんを庇って、神楽ちゃんに叫ぶ。

「そうアルカ?オニはーソトー!」

神楽ちゃんがぱらぱらと豆を投げると、復活した銀さんがうおー!って言いながら部屋をあちこち移動してくれる。

「神楽ちゃん、鬼は外の後には福は内って自分の方に豆を投げてね?」

「フクはーウチー!」

僕等がきゃっきゃっと銀さんを追いかけて豆を投げると、銀さんはうおー、やられたー、って言いながらちゃんと全部の部屋を回って外に出てくれる。

「神楽ちゃん!鬼が外に出たから入ってこない内に全部の戸を閉めて!!」

僕が言って玄関の戸を閉めようとすると、そこに人影が…銀さんじゃないよね…?

「悪い子はいねがー!」

ぎゃーっ!?何か変な鬼入ってきた!変な鬼入ってきたぁーっ!?

「悪い子は…」

「その鬼違うーっ!それ、なまはげっ!!」

僕がぱしん、と豆をぶつけると、鬼の面を取った沖田さんがえーっ?とか言う…もぅ…

「新八危ないヨ!オニはーソトー!」

神楽ちゃんの本気の豆が沖田さんを襲う。
沖田さんが、するっと豆を避けると…壁に穴がァァァァァァァっ!
しゃがみながら沖田さんが床に落ちていた豆を拾って、

「鬼はー外ー!新八はー俺の―!」

とか叫びながら本気で豆を神楽ちゃんに向かって投げる。
当然神楽ちゃんはその豆を避けるから、あぁぁぁぁ…又壁に穴がァァァ…

「ちょっとぉぉぉぉぉぉぉっ!アンタ何叫んでんのっ!?それに本気で豆投げないでっ!壁に穴がぁっ!!」

「オニはーソトー!新八はーワタシのアル!!」

「だからっ!やぁーめーろぉーよぉぉぉぉぉぉ!!」

僕がフライパンを盾にして2人の闘いを止めるべく挑もうとすると、外から帰ってきた銀さんが、ぽんぽん、と僕の肩を叩く。
同情なんかいらねぇよ!アンタも止めろよ、この2人っ!!

「2人とも!いい加減にしないと、僕怒りますよ?」

僕が叫ぶと2人がぴたっと止まる。

「…すいやせん…」

「ゴメンヨ、新八…」

…いつも素直なのに、何で怒られるまでケンカするんだろ、この2人…
皆で撒いた豆を掃除して、食べるように取っておいた豆を年の数だけ食べる。

「トシの数しか食べれないアルカ…?」

「うん、これは縁起物だからね。年の数を食べないと御利益ないよ?」

「残念ヨー…」

神楽ちゃんが、あっという間に豆を食べてしまう。

「明日余ったの食べて良いよ?今日は年の数だけね?」

「明日ならイイのカ!?楽しみアルー!」

ニコニコ笑った神楽ちゃんが、定春に抱きついて喜ぶ。
僕と沖田さんが豆を食べ終わっても、銀さんはまだポリポリ食べていた。

「銀さん…豆の数、多くないです…?」

「いっ…いや?そんな事ねーだろ?にじゅうぅや粒だぞ?」

「…もっとありません…?」

「いや、無い。」

…銀さん凄い汗…この話題には触れない事にしよう…

後片付けが全部終わったんで、帰り支度をしてソファを立つ。

「じゃぁ、僕帰りますね。」

「えー?新八泊まっていくヨー」

「おう、泊まっていけよ。今日は追い出された鬼がうろうろしてるぞー?」

2人が引きとめてくれるけど…

「あ…でも、家の方も豆撒きしたいし…」

「旦那、心配しなさんな。その為の俺でさぁ。」

沖田さんが僕の手を握って、ぐい、と引っ張る。

「あぁ、なるほどね。」

「ドS!テメーちゃんと新八送れヨ!」

2人の生暖かい目がちょっと気になるけど…

「じゃぁ、失礼します。」

ぺこり、と会釈して、万事屋を出る。
僕の家に向かって歩きだすと、沖田さんがにこりと笑う。

「新八ィ、豆まきってのは楽しいねぇ…」

「真選組ではやらないんですか?」

「あー、そんな暇ねぇや。」

「へー、そんなもんですか…じゃぁ、来年も一緒に豆まきしましょうね?」

僕がそう言うと、きょとん、と僕を見てにっこりと笑う。

「来年も再来年もその後も、ずっと一緒にやりやしょう。次も鬼は俺がやってやらぁ。」

「あはは、でもなまはげは違いますよ?」

僕が笑うと、

「そうですかぃ…研究しまさぁ…」

とか言ってる…
何だか嬉しいな…ずっと先まで一緒に居てくれるつもりなんだ…
繋がれている手をぎゅっと握って僕が笑うと、沖田さんもぎゅっと握り返して笑ってくれる。

豆まきの効果、早速出たのかな?
もう、福が来た気がします。



END