19・白昼堂々


どうしよう、どうしよう、こんな気持ち初めてだ!

あの人の顔を見るだけでドキドキする。
あの人の声を聞いただけで全身に血が駆けめぐる。
あの人に話しかけられたりしたら、きっと挙動不審になるよ!
あの人に触れたりなんてしたら…きっと僕の意識はどこか遠い所へ行ってしまう。

なんなんだ?この気持ち?
なんて、分かってる。
これは恋…きっと恋…
でもでも冷静になれ!僕!!
あの人は男の人だし、僕もまごう事無く男だ。

こんなのおかしい!絶対おかしい!!
うんうん、僕はお通ちゃんみたいな可愛い女の子が好きなんだ!
お通ちゃん…
あれっ!?お通ちゃんを想い浮かべたハズなのに、なんでか顔があの人になったぞ!?

おかしい、おかしい!僕は…もう逃げられない…?
ぐるぐるぐるぐる思考が巡る。

あ、巡る、ってお巡りさんの漢字…

って何!?そうじゃなくて!!

駄目だ駄目だ落ち着こう。
買い物にでも行って気晴らしして来よう。

「銀さん、僕買い物行ってきまーす。」

「おーう。」

「行ってこいヨ」

…誰も付いてきてくれないんだ…荷物持ちぐらいしろよな…
うっすい財布を握りしめ、買い物かごを持って万事屋を出る。
今日は大江戸ストア、何が安かったっけ…?
あ、何かいい感じ。
あの人の事が頭から離れそう。

大江戸ストアで特売品をゲットして、ウキウキと帰り道!
めっずらしく豚肉が特売品になってたんで、決死の覚悟で挑みました。
今日は〜、肉じゃが!肉じゃが!!
ウキウキと帰る万事屋までの帰り道、僕の前方にはもうすっかり見慣れた黒服と、黒い頭と茶色い頭。

どくん…どくどく…どくどく…

うっ…うるさいよ、心臓…!
思った途端、走りだす足。

あれー?

「沖田さんっ!」

勝手に開いてあの人を呼びとめる口。

あれー?

まぁいいや。
見廻りご苦労様です、って言うぐらい普通だよね?

「お、万事屋の…」

沖田さんが振り返り、僕を見止めてにこりと笑う…

「好きですっ!僕、沖田さんの事、好きですっ!!」

あれー?
…って!僕何言って…!?

慣性の法則で沖田さんの前まで走って固まった僕を、ポカン、と沖田さんが見つめる。

うわっ、うわっ、どうしよう…!!

足の先から頭の先まで真っ赤になって固まったままの僕を見て、沖田さんがニヤリと笑う。

「白昼堂々大胆ですねィ…嫌いじゃねぇよ?そういうヤツ。」

そう言って、僕の頭をぽんぽんと叩いて手を揚げて行ってしまった…

あ…あれ…?僕今告白したよね?しちゃったよね…?
…沖田さんには通じなかったのかなぁ…?
でもでも、嫌いじゃない、って言ってたよね!

…1回告白したら、開き直っちゃったよ?僕…
明日から…覚悟して下さいよ?沖田さん!
僕の気持ちは、結構スゴイですから!!


END