いつもいつも沖田さんにはドキドキさせられてるから、なんか悔しい!
たまには僕だって、沖田さんをドキドキさせたい!!


15・小さな逆襲


皆出かけてしまった万事屋のソファの上で、『沖田さんをドキドキさせよう大作戦!!』
そう思ってイロイロ考えてるけど、何も思いつかないなぁ…どうすれば沖田さんをドキドキさせられるのかなぁ…う―ん…僕がドキドキするのは………いつもの事だよな………

『新八ィ』、って呼ばれてもドキドキするし、僕だけに見せてくれる無邪気な笑顔にもドキドキする。
手なんて繋がれたら、ドキドキ最高潮だし、抱き締められたり、きっ…きすなんてされたら、心臓爆発しそうになるよっ!

僕はどんな事でもずっとドキドキしてるのに、沖田さんはいつだって涼しい顔で余裕の笑顔。
ぎゅっ、って抱き締められても僕の心臓はひどく煩くなるのに、押さえつけられた僕の耳に聞こえてくる沖田さんの心臓の音は、とく…とく…って普通通りの早さだしさっ…僕の心臓の、すっごく早い音が聞こえてやしないかっていっつも心配だよ…
いや、聞こえてるんだろうな…だって、僕を抱き締めるといっつも沖田さんは、にっこりと嬉しそうに笑うんだもん。何て言うの?勝ち誇ったみたいな…

その笑顔を見て更にドキドキが激しくなるんだから、もういつも僕の負け決定って感じで…
1回で良いから、僕が余裕の笑みを見せたいっ!!

僕が1人でうんうん唸りながら考えていると、沖田さんがやってきて、又あの笑顔。
僕の心臓を壊すつもりかよっ!もぅ!!

「新八ィ、どうしたんでぃ。うんうん唸りながら何か難しい事でも考えてんですかぃ?」

沖田さんが、ぽんぽん、と僕の頭をなでる。
もぅ!またドキドキしちゃったよっ!!

「えぇ、もぅすっごく難しい事考えてますっ!邪魔しないで下さいよ、沖田さんっ!!」

僕が、むぅ、とむくれて手を払っても、気にした風もなくニヤリと笑う。

「何でぃ、俺で力になれそうなら言ってみろぃ。俺は意外と何でも出来ますぜ?新八の為なら。」

あ―、もぅっ!何でそんなに優しいかなっ!!
僕の心臓を壊すつもりだろ、コノ人っ!!
僕が真っ赤になった顔をパタパタとあおぎながら頬を膨らますと、又綺麗な笑顔。

「ほら、話してみなせぇ。それとも俺じゃァ頼りになりやせんかぃ?」

ちょっと寂しそうな顔にも、ドキッとする。
あ―もぅ、僕はとことんコノ人に惚れちゃってるんだなぁ…

「もぅっ!総悟さんに言ってもダメなんですっ!僕が見付けたい…ん…だから…?」

沖田さんがいきなり真っ赤になって、口を押さえる。
何!?いきなり僕の目的達成?何が…?

「不意打ちとは汚ねぇや…」

「なっ…何がですかっ!…沖田さん、ドキドキしてます?」

「…無意識かぃ…は?ドキドキなんざ、いっつもしてらぁ。新八の天使の笑顔を見た時だって、鈴の音みたいな声を聞いた時だって、ずっとドキドキしてらぁ。手ェ繋いだり、きっ…きっすする時なんざぁ心臓バクバクで破裂しそうでさぁ!」

沖田さんが赤い顔で、ちょっとむくれる。
あ―もぅ、可愛いなぁっ!

「沖田さんいっつも平気な顔してるから…僕ばっかりがドキドキしててズルいな、って…なんとかドキドキさせられないかな、って…思ってたんですけど…沖田さん、何で赤くなったんですか?」

「…教えねぇ…」

「ズルイですっ!教えて下さい!!」

僕がぎゅうっと抱きつくと、沖田さんの顔が更に赤くなる。
耳まで真っ赤だ………

「あ―、もぅ!教えまさぁ!…新八は滅多に名前で呼んでくれやせんからねぇ。慣れてないんでさぁ。」

少し上から、やれやれ、って感じで見下ろしてくる。
…この角度も…ドキドキする…
でも、あれっ?僕…

「僕名前で呼びましたっけ?」

「呼びやした。」

え―っ!?無意識で呼んじゃった!?
そっ…総悟なんて…恥ずかしくて心の中でしか呼べないよっ!!

「もう1回…呼んでくれやせんかねぇ…新八の声で聞きてぇや…」

沖田さんが赤い顔でぽそっと呟く。
えっ…え―………呼べるかな………

「…そ―ご………」

抱きついたままの僕の耳に、とくん、と大きく沖田さんの心臓の音が聞こえる。

「心臓に悪ィや…」

「僕の心臓にも悪いです…」

いつもよりちょっとだけ優しい沖田さんの声は、僕の心臓をもっとドキドキさせる。

…名前で呼ぶのは、イザ、って時だけにしておこう…
小さな逆襲のつもりが、僕にまでダメージ大きいもん…


END