10・褒めて?


見廻りの途中でふと通った大江戸ストアで、タイムセールが始まった。

え―と…?トイレットペーパーと…豚肉が…おおっ!安いじゃぁねぇか!!…新八についていつも一緒に買い物に来てるからなぁ…最近物の値段が判るようになっちまったぜぃ…

早速オバちゃんの群れの中に突っ込んで、両方ともゲッツだぜ!!戦利品を片手に意気揚揚と新八の元へ向かう。喜んでくれますかねぇ…イヤ、きっと大喜びですぜ!お礼のチュウぐらいくれるかもしれやせんねぃ。

「うぃ―っス、新八居るかぃ?」

俺がのんびりと万事屋に入っていくと、鬼気迫る表情の新八が、大慌てで出て行こうとする。

「何でぃ何でぃ、愛しの沖田さんが手土産持ってやって来たってぇのにツレナイねぇ…」

俺がそう言うと、新八が、ギッ、とこっちを睨んで吐き棄てる。

「あ―、いらっしゃい。悪いんですけど僕これから大江戸ストアにトイレットペーパー買いに行かなきゃいけないんで、留守番お願いします。」

俺が手に持った戦利品を持ち上げてにやりと笑う。と、驚いた新八の顔が満面の笑顔になる。

「沖田さんっ…!買ってきてくれたんですかっ!?」

「おうよ。」

さぁ来やがれ、感謝の言葉と一緒に熱烈な抱擁でも、ちゅうでもいいぜィ!!俺が待ち構えていると、新八が、ぶはっ、と吹きだした。なんでぃ、失礼なヤツだなぁ…

「あははははっ…沖田さんなんて顔してんですかっ!お使いに行ってきた犬が『褒めて?褒めて?』って言ってるみたいですよっ?」

心底楽しそうに新八が笑う。なんでぃ、なんでぃ、可愛い顔しやがって…

「なんでぃ、気が利くダンナにいたわりと感謝の言葉はねぇのかよ。なんなら感謝のちゅうでも良いんだぜ?」

未だにあははと笑ってる新八が、俺の頭を撫でる。

「ありがとうございます。凄く助かりましたっ、大好きですよ?」

トイレットペーパーと豚肉を横に置いてギュっと抱き締めたら、暴れて逃げられやしたけど、新八は喜んでくれたし、嬉しい言葉ももらったし…まぁ、良しとしてやりやすかぃ………


END