「眠れない話に新八が居なかったのは、きっとこんな理由。」
「新八ぃ〜、今日も行くアルカ・・・?」
神楽ちゃんが僕の腕につかまって、ぶんぶんと腕を振りながら、甘えた声で僕を見上げる。懐かれてるなぁ、僕。
ちょっと嬉しくなりながら、ぽんぽんと神楽ちゃんの頭をなでると、すりすりと僕の手にすり寄ってくる。
「神楽ちゃん、行くんじゃなくて帰るんだよ?」
「・・・あんな所に帰るなんてゆうなヨー・・・」
うるっと目を潤ませて、僕を見上げてくる。
・・・うっ・・・こんな顔されたら・・・でもでも・・・
「帰る、で良いんだよ。だって今は・・・アソコが僕の家だもの・・・」
「そんなコトナイネ!!あんなトコが新八の家なワケナイネ!!新八の家はココヨ!新八はみんなのマミーヨ!!」
僕の袖にグリグリと顔を押し付けてくる神楽ちゃんが可愛くて、ちょっとほだされそうになるけど・・・でも、そんな事したら、後が面倒くさいしな・・・それに・・・僕もやっぱり帰りたい。毎日1回は・・・逢いたいもん・・・
「もう、神楽ちゃん・・・そんな可愛い事言ったってダメだからね!マミーとか言うならちゃんとお手伝いしてよ。朝から晩までゴロゴロゴロゴロしてて・・・そんな事してたら夜寝られなくなるよ?」
「寝られるネ!毎日グッスリヨ!・・・でも・・・新八が居ないと寝られないかもしれないネ・・・」
「もう!僕のせいにしないの!!知らないからね?今日なんて遊びにも行かないで・・・ホント、寝られなくても知らないよ?明日仕事入ってるんだから!朝早いんだからね?」
「だって・・・今日は買い物行けなかったアル・・・ワタシが居ないとアイツが来るネ・・・」
なんとか腕から神楽ちゃんを離して帰り支度を始めると、神楽ちゃんは俯いて、ギュッと拳を握る。
「・・・神楽ちゃん・・・いくら沖田さんでもそんなにそんなにサボら・・・無いと思う・・・よ・・・?」
「心外でさぁ。新八は俺の事そんな風に思ってたんで・・・?」
突然後ろから声がかかる。
おっ・・・沖田さん・・・気配消すの、止めてくんないかなぁ・・・心臓に悪いよっ!!
「ドSっ!何しに来たネ!!」
「沖田さんっ!気配消すのやめてくれません!?」
「なんでィ、折角買い物して帰ェろうと思って迎えに来たってェのにつれないねぇ。」
突進してくる神楽ちゃんを片手で押えて、僕に苦笑を向けてくる。
・・・そんな笑顔・・・惚れ直すじゃん・・・
抑えきれなくて緩んでしまった顔を向けると、今度はにっこり笑顔を向けられる。
片手で押えられてた神楽ちゃんは、僕のだらしない顔を見て呆れたのか、ぐるりと後ろを向いてしまった。
「もうっ!晩御飯はお魚ですからねっ!」
「え〜?肉が良いでさァ〜!新八ィ〜・・・な?」
ひょいっ、と覗きこまれたら、顔に熱が集まる・・・
眉毛を八の字にして上目遣いで見られたら、流されちゃうし・・・
「・・・野菜もちゃんと食べるんですよ・・・?」
「勿論でさァ!新八の作るもんなら何でもうまいんでィ!!」
「もぉ、調子良いなぁ・・・ならお魚でも・・・」
「昨日も刺身だったじゃねェかィ!!」
「・・・なにも泣かなくても・・・」
くすくす笑って手をつないで、僕の荷物を沖田さんが持ってくれる。
「じゃぁ、僕上がらせてもらいます。お疲れ様です。」
銀さんに声をかけると、うぃ〜、とか答えが返ってくる。
神楽ちゃんも、うん、って言ってくれる。
「明日は仕事入ってるアル!新八に手ェ出すなヨ!ドSっ!!」
「へいへい。」
にやり、と笑って僕の手を引いて歩きだす。
一緒にお買い物して、一緒の家に帰って・・・
家族になったんだなぁ・・・って実感する・・・
「明日は仕事なんで?」
「はい、朝早いんですよ。今日は早めに休みますね?」
「・・・じゃぁ1回しかデキねェなァ・・・」
「ちょっ・・・!?仕事あるって言ってんじゃないですかっ!」
「・・・ヤなんで・・・?」
「・・・・・・・・・1回だけですからね・・・?」
「んじゃぁ、さっさと買い物してさっさと帰りやしょうぜ!俺達の家に!!」
「・・・もう・・・・・・・・・はい・・・」
ぎゅっと手を握り直して、スーパーへの道を走った。
◆
「・・・新八行っちゃったアル・・・」
「そりゃぁ行くだろ。旦那のとこに帰るだろ。」
「新八は万事屋のマミーアル!」
「・・・まぁなぁ・・・」
「銀ちゃんがしっかりしてないから、アイツに盗られたアルっ!」
「俺か!?おれのせいですか!?」
「・・・あんな顔されたら、止められないヨ・・・目を瞑ったら浮かんでくるから、目、瞑りたくナイアル・・・このままじゃ寝れないヨ・・・・・・」
「まぁまぁ、寝れなくなったら一緒に寝てやるから。」
「いやアル。銀ちゃんなんかオッサンの臭いするアル。」
そして続く・・・
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