それはサンタの贈り物



世間は赤と緑に埋め尽くされた12月。

それでも俺達学生はまだ学校に行かなきゃなんねェで。
でも、愛しいあのコに逢えるのは学校だけで。
面倒だけど、俺ァサボる事も無く朝から学校に行っていた。
そんな学校も今日で終わりで、あのコに逢える時間もあと少しの放課後。

なんとか休み中にも逢える約束出来ねェかなァ…
邪魔者なんざ居ねェで…2人っきりで…
こんな良い子にしてんだから、サンタさん俺にプレゼントくんねェかィ?
勿論あのコ絡みのモン限定で…

「オマエが良いコな訳ないネ。ボケるのも大概にするアル。」

「あぁ?チャイナテメェ俺の頭ん中覗いてんじゃねェよ!」

「マジでそんな事考えてたアルか!?痛い痛い痛い!キモいアル!!パチ恵逃げるヨロシー!」

「…殺す…」


顔を合わせば喧嘩しかしねェチャイナ娘が、こんな日にまで俺に悪態を吐いてくる。
取り敢えず、コイツが居たんじゃあのコに声を掛ける事も出来やしねェ。
なんとか撃退して、あのコと話を…

ムカつくチャイナに蹴りとパンチを浴びせていくが、中々上手い事決まらねェ…
大体、何なんでィ、チャイナが持ってるダラダラと長いピンクの布切れ…ん…?待てよ…アレ…

「チャイナさん、その手に持ってる聖骸布はもしや…」

震える声で確認すると、チャイナはムカつく顔で笑った。
でも、そんな事ァ気にならねェ。
だって…アレは…あの大きさは…

「おやおや、さすがエロ坊主は見逃さないねぇ。」

ものっスゲェ得意顔だって気に…やっぱムカつく…
しかし、俺の読みが間違ってなかったとしたらアレは…あのコの…パチ恵の…

「そう、コレはパチ恵のアソコにピッタリとくっついていた…」

ゴクリ
恥ずかしい話だが、緊張で喉が渇く。
チャイナにまで聞こえるように喉が鳴っちまった…

「ブラジャーアルヨ。」

「おっ…おブラ様!!!!!テメェ、そんなモン何処で…」

「昨日パチ恵の家にお泊りしたネー風呂に落ちてたから拾っといたアル。」

ヒラヒラと俺の眼の前をピンクのおブラ様が舞う。
でっ…デケェ…アレいっぱいに、おっ…お…おっ…言えねェ!

「明日はクリスマスイブだからナー…どうしよっかなー?」

意味有り気な顔で上から俺を見るチャイナ。
…まさか…アイツがサンタクロース…

イヤイヤイヤ、落ち着け俺!
そんな事が有る訳…

「…狙いは何でィ…酢昆布か…?ケーキか…?それともチキンか…?」

「そんなの要らないアル。可哀想なオマエにプレゼントしてやんよ。」

「チャイナ様!」

いつもは憎たらしくて殺したくなるチャイナの顔が、聖母に見えらァ!
何だコレ、クリスマスの奇蹟か!?

ふわり、と俺の頭の上に舞い降りるおブラ様…
そっと手に取って見ると、すべやかで滑らかで…おぉぉぉぉ!これが…これがあのコの…

まずはじっくりと眺めてみる。
パチ恵…綺麗なピンクでさァ…

そして頬ずりしてみると、まるでその向こうにパチ恵が居るようで…
なんて気持ち良いんでィ!

そして遂に…
俺が鼻を近づけてスゥッと息を吸い込むと、あのコの匂い…
甘くて…蕩けそうでィ…



「…沖田君何して…って!キャァァァァ!何で沖田君がそんなの持ってるの!?ソレっ…ソレ私のっ…!」

俺に駆け寄ってきたパチ恵が俺のおブラ様を引っ手繰る。
え…?パチ恵…?

「なっ…イヤあのソレはチャイナが…」

駄目だ!
言い訳がなんも思いつかねェ!!

「神楽ちゃん!?あ!昨日泊って…ってだからって何で沖田君が私のブっ…ブラ…」

「スゲェ良い匂いしやした…」

「匂っ…変態ィィィィィィ!」

パチ恵が俺に向かって何かを投げつけて、上手い具合にソイツが俺の顔に当たる。
そこまでがスローモーションで見えて、すぐに恐ろしいスピードでパチ恵が走り去って行くのが見えた。

あ…



ヤベェェェェェェ!
嫌われた…確実に嫌われた…

チャイナの野郎、パチ恵が教室に戻ってくんの知ってて俺におブラ様なんて危険物渡しやがったな…殺す…
それは決定事項だけど、俺ァもうパチ恵に目も合わせて貰えねェかもしんねェ…
畜生!一時の欲望に身を任せるんじゃ無かったぜィ!!

でも、もう遅ェ…

ガックリと肩を落として俯くと、パチ恵が投げて来たモンが俺の目に入る。


…クリスマスの…プレゼント…?


拾い上げて包みを開いてみると、そこには小さなカード…おきたくんへ…『沖田君へ』!?
パチ恵から俺への…クリスマスプレゼント!?
こっ…これは…脈アリ…なんですかィ…!?
パチ恵は俺の事…


俺は慌てて鞄を引っ掴んで、志村家近くのショッピングモールにと駆け込んだ。
パチ恵に渡す、クリスマスプレゼントを買いに。


END


「さんたくろーす到着でィ!」

「変態はサンタさんじゃありません」