「「とりっくおあとりーと!」」
      
      僕らが真選組屯所の前で叫ぶと、山崎さんが笑顔で迎えてくれる。
      
      「2人とも待ってたよー!はい、お菓子。」
      
      綺麗にラッピングされたお菓子を僕らにくれる。
      
      「わー、2人とも今日は可愛いねー!」
      
      「ワタシはいつも可愛いアル!新八も何着ても可愛いネ!」
      
      神楽ちゃんが、照れながら言う。
      あははと笑った山崎さんが、僕の隣に移動する。
      
      「新八君にはコレあげるね?」
      
      そう言って、僕の背中に何かを付ける。すっごい早業だなぁ…
      
      「あー!新八羽付いてるヨ!!」
      
      神楽ちゃんに言われてなんとか振り向いて背中を見ると、黒い蝙蝠みたいな羽が付いていた。
      神楽ちゃんが羨ましそうに僕を見ると、山崎さんが今度は神楽ちゃんの隣に移動する。
      
      「チャイナさんは女の子だからね、こっちを付けてあげる。」
      
      「あ、神楽ちゃん!リボン可愛い!!」
      
      山崎さんがまたもや早業で神楽ちゃんの髪に黒いリボンを結んだ。
      リボンに触れた神楽ちゃんがにこりと笑って頬を赤くする。
      
      「ジミー…ありがと…」
      
      「いえいえ、どういたしまして。あ、屯所の中色々廻ってみなよ。局長が部屋で待ってるよ?」
      
      山崎さんに教えてもらって、屯所の中を探検する。
      
      「「とりっくおあとりーと!」」
      
      玄関に居た隊士の人達に言うと、皆飴やガムや色々くれた!
      
「「とりっくおあとりーと!」」
      
      廊下で会った伊東さんが、シュークリームをくれて、僕らの頭を撫でてくれた。
      
      「「とりっくおあとりーと!」」
      
      食堂に居た土方さんが、携帯マヨネーズをくれた。
      …やっぱりこの人はお菓子じゃなくてマヨネーズなんだ………
      
      「「とりっくおあとりーと!」」
      
      やっと近藤さんの部屋に行くと、近藤さんが笑顔で迎えてくれる。
      神楽ちゃんが駆け寄って飛びついた。
      
      「お菓子くれヨー!くれないとイタズラするアル!」
      
      「ははは、チャイナさん今日は可愛い格好だな!ケーキを買ってあるから皆で食べよう。」
      
      「わーい!有難うございます!!」
      
      僕はいそいそと席につくけど、神楽ちゃんはまだ近藤さんに抱きついたままで…
      
      「ゴリ、もうボケたアルカ?ワタシは神楽よ!」
      
      「おぉスマンスマン。机の所に行って座って待っていてくれないかい?神楽さん。」
      
      それを聞いた神楽ちゃんが、えへへと笑って大人しく僕の隣に座る。
      神楽ちゃん、いつの間にこんなに近藤さんになついたんだ…?
      
      「神楽ちゃん、いつの間に近藤さんと仲良くなったの?」
      
      「新八の家に行ったら絶対居るヨ。もぅ慣れたネ。」
      
      もう慣れた、って態度じゃないけど、そう言う事にしておいてあげよう。
      近藤さんがケーキとお茶を持ってきてくれたんで、大喜びで食べると、近藤さんがにこにこ笑って僕らを見る。
      
      ケーキを食べ終わって、お礼を言って近藤さんの部屋を出ようとすると、呼び止められた。
      
      「新八君、ここの廊下を真っ直ぐ行った1番端の部屋が総悟の部屋だから。」
      
      近藤さんがそう言って笑う。沖田さんも何かくれるのかな?
      神楽ちゃんと2人でそこまで歩いて行って、ばん!とふすまを開ける。
      
      「「とりっくおあとりーと!」」
      
      そこには、僕とお揃いの衣装を着崩した沖田さんがむぅ、と座っていた。
      僕らを見てびっくりした顔をした沖田さんが、すぐにニヤリと笑う。
      
      「近藤さんめ…」
      
      ぼそりと呟いて立ちあがった沖田さんが、僕に近付いてくる。
      
      「新八ィ、えらい可愛い格好じゃねぇか。惚れ直しやすぜ?」
      
      「沖田さんだって同じ衣装着てんじゃん…」
      
      僕が顔を赤くして言うと、イヤな顔をする。
      
      「これァ近藤さんに言われて無理やり着せられたんでさぁ…山崎に…」
      
      むか。何?山崎さんとはそんな仲良いんだ…
      僕がちょっとムッとしてると、沖田さんが戸棚からホールのパイを持ってくる。
      わぁ、美味しそう!
      
      「ホラ、チャイナコレやるよ。」
      
      ホールごと神楽ちゃんにパイを渡す。
      え…?
      
      「沖田さん、僕は?」
      
      僕が首をかしげて沖田さんに聞くと、沖田さんの顔がにやぁ―――――っ、と崩れる。
      長い耳と羽根のせいで、本物の悪魔みたいな………
      
      「新八には有りやせんぜ?菓子が無きゃぁイタズラするんだろぃ?」
      
      「えっ…?ちょっ…」
      
      沖田さんが僕にするっと近付いてきて、ぎゅうと抱きしめてくる!?
      はわわわわわわわ!!!
      
      「かっ…神楽ちゃん助けて!!」
      
      神楽ちゃんが僕らに駆け寄ろうとすると、沖田さんが神楽ちゃんに言う。
      
      「チャイナー、近藤さん、アップルパイ大好きなんですぜぃ?」
      
      「マジでか!?」
      
      神楽ちゃんがアップルパイを持って走って行ってしまう。
      
      「あー!神楽ちゃんの裏切り者ォォォォォォ!!!」
      
      「ワタシは忙しいアル!新八もそろそろ自力でなんとかするネ!」
      
      僕の叫びが空しく響く。
      
      「さーて、可愛い悪魔に尻尾はついてるのかなー?」
      
      「かなー?じゃねーよ!付いてねーよ!!アンタには付いてそうだけどな!!」
      
      僕が自棄になって叫ぶと、沖田さんが嬉しそうにニヤリと笑う。
      
      「お?確かめてみるかィ?」
      
      すっごい良い笑顔でカチャカチャとベルトを外し始める…
      ギャー!しくじったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
      でも、沖田さんの腕からは逃れる事が出来たぞ!!
      
      「いっ…いたずらするのは僕だよね?僕、お菓子なんて無くてもそんな事しないし…」
      
      僕がずるずると後ずさりながら、あはは、と笑うと、沖田さんが真顔で
      
      「あぁ、TRICK OR TREAT」
      
      と、妙に良い発音で言って笑う.
      
      「ぎっ…きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
      
      
      
      ………その後………?…何も言いたくない………
      
      
      
      
END
ハロウィーン小説ー!!
初めはちびっこ2人で可愛く終わるはずだったんですがね…
沖田さん絡めたらおかしくなった…
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