大好きな…



「新八!明日どうするネ?」

買い物に行く途中、神楽ちゃんが嬉しそうな笑顔で僕に言ってくる。
……明日………?

「何かあったっけ?10月10日…体育の日?」

「違うネ!体育の日は月曜日ネ!新八のボケは面白くないアル!明日は銀ちゃんのたんじょう日ネ!」

「あぁ!明日だ!!忘れてたわけじゃないよ?ホラ、色々忙しかったから!!」

僕があわあわと言い訳すると、神楽ちゃんの目が細まる。

「別に忙しくなかったネ。万事屋に仕事なんかなかったネ。」

はぁ――――っ、と溜息をついて、神楽ちゃんがすたすたと歩いて行ってしまう。
なっ…なんだよっ!万事屋に仕事が無くったって、僕は仕事有るんだからな!!雑用全部押しつけやがって!!
でも…銀さんの誕生日…何かお祝いしたいよな…

「神楽ちゃん待ってよ!銀さんの誕生日、って言っても僕らお金無いよ?プレゼントなんて買えないよ…」

僕が神楽ちゃんに追いついて言うと、神楽ちゃんが悲しい顔で振り向く。

「でも…ワタシのたんじょう日はやってくれたヨ…」

確かに、神楽ちゃんの誕生日にはお祝いをやった。お金が無いなりに頑張ったんだけど…
でも、凄い喜んでくれたっけ…
今はその時よりもさらにお金無いよ…あの時も、少しだけど銀さんがお金作ってきてくれたんだ…
僕が出来るとしたら…

「ケーキ、作ってみる…?僕も作った事無いけどさ。だけど、ケーキ作ったら今日の晩ごはんのおかず、1品減るよ?」

僕が思い切って言ってみると、満面の笑顔で振り向いた神楽ちゃんが飛びついてくる。

「おかずなんかいらないネ!銀ちゃんにはケーキが1番ネ!!すっごく喜ぶヨ!きっと!!」

えへへー、と笑う神楽ちゃんの嬉しそうな顔を見たら、今日の晩ごはんはふりかけで我慢してもらおう!って決めた。

「じゃぁ今日はケーキの材料を買って帰ろうね。何が要るんだろう…?」

料理はそこそこ出来るけど、ケーキなんて作った事無いから何が必要なのかさっぱり分からないよ…
大江戸ストアに行く途中の本屋さんで、ケーキの作り方の本を立ち読みする。
へぇ…色々要るんだなぁ…
材料と作り方をこっそりメモして(ほんとはやっちゃダメだよ!)大江戸ストアに向かう。

「新八、新八!ワタシも一緒に作ってイイカ…?」

神楽ちゃんがはにかんだようにモジモジと僕に言う。
なんだか可愛いなぁ!

「もちろん!あー…でも、そうなったら銀さんには暫く出かけててもらわないとね!…どうしよう…」

僕らがうんうん唸りながら大江戸ストアに向かっていると、僕の後ろから声が掛かる。

「新八ィ、何うんうん唸ってやがんでぃ。」

「あ!沖田さん!!」

いつものように大江戸ストアには沖田さんが居た。
そうだ!沖田さんに手伝ってもらおう!!

「沖田さん、明日暇ですか?もし暇ならちょっと協力してほしいんですけど!!」

「なんでぃ?新八の頼みならきかないでもないですぜ?」

僕が沖田さんに事情を説明すると、沖田さんがニヤリと笑う。

「お父さんの誕生日ですかぃ。で?協力した俺にゃぁ何か見返りは有るんで?」

「なっ…お金取るの!?」

難しい顔をして考えてた神楽ちゃんが、ぷぅ、と膨れながらしぶしぶ言う。

「…新八を1日好きにしていいアル。」

「って僕かよっ!?」

「そりゃぁ確かですかぃ?」

「ニゴンはないアル!好きにするヨロシ。」

「ちょっ!!僕の意見は無視ですかぁぁぁぁぁぁ!?」

僕の叫びを無視して、神楽ちゃんと沖田さんが握手する。
1日好きに…って…パシリにされるのかなぁ…呪いの実験体とか…?
それとも……………?

とりあえず、先の事は後から考えよう。
メモを片手に必要な材料を買って、万事屋に帰った。