誕生日の風景。



もうすぐ7月8日がやってくる。
あ―、もぅどうしようっ!?出会って初めての沖田さんの誕生日だってゆうのに、プレゼント決まんないよっ!
別に催促された訳じゃないけどさ…何かあげたいんだ、僕が。
だって…沖田さん、って人がこの世に生まれて来てくれた日だから…
だけど、僕の財布の中身は全くもって寂しいし…
とりあえず日払いのバイト、探してみよう。ど―せ万事屋には仕事、来ないしね…やっぱり肉体労働かなぁ…集英建設に行ってみよう…



今日、姉上から俺宛に荷物が送られてきた。新しい薄紫の着物と濃紺の袴だった。
何でぃ…?ここ最近何か有りやしたかねぇ?
荷物の中には手紙が一通入っていた。あぁ、そうか。そんな時期か…

『そ―ちゃんお誕生日おめでとう、新しい着物を贈ります。今年はこの色が流行りだそうなので、誕生日にはコレを着て彼女とデートを楽しんでね♪』

…等と書かれていた…姉上…彼女なんて、俺ァ居ませんぜ…
まぁ、狙ってるコは居やすがね。

…誕生日ぷれぜんとくらいは貰える仲だとは思いやすが…アイツは友達のつもりでしょうからねぃ…
まぁその日に告白、ってぇ手もありやすが、断られた時の事を考えやすとねぇ…誕生日じゃなくても、とか弱気になるんでさぁ。
でもまぁ、近藤さんが気ィ利かせてくれて、8日を非番にしてくれやしたからねぇ…遊びにでも誘って、でーと気分でも味わうとしやすかねぇ…



…集英建設は土日は休みだった…

ど―すんだよ、僕ぅ!!!

そ―っとサイフを覗いて見ても、やっぱり500円しか入ってないよ…今どき500円で何が買えるんだよ!!んまい棒!?んまい棒か!?
姉上や銀さんにお金借りようかな…

無理だな。

大体アノ人何が好きなんだ?僕、結構沖田さんの事知らないよな…
これが土方さんや山崎さんや銀さんなら分かり易いのに!!
沖田さんの好きなもの…お菓子とか…お菓子とかお菓子とか?
って、お菓子ばっかりしか浮かばないよっ!!
お菓子ったって、ケーキは予算的に無理だし…駄菓子くらいしか買えないよっ!
ってかもう、んまい棒で良いんじゃね?んまい棒の詰め合わせで良いんじゃね?500円有れば結構買えるよね?んまい棒。
…もう良いや、そうしよう。気持ちだよ、気持ち。

僕がそんな事を考えながら投げやりになっていると、万事屋の電話が鳴った。
…珍しい。依頼かな?
僕がそう思ってよそいきの声で電話に出ると、電話の相手は沖田さんだった。

「新八ィ、明日、俺、非番なんでさぁ。どっか遊びに行きやしょうぜ―」

「えっ?僕お金無いですよ?それに…折角の非番に僕なんかと一緒に居て良いんですか…?かっ…彼女と…デートとかしないんですか…?」

…誕生日なのに…1番大切な人と一緒に居たいんじゃ…

「はぁ?俺ァ彼女なんていやせんぜ。それに俺ァ新八と一緒の方が楽しいんでさぁ。新八の事、大好きですからねぇ。金のこたぁ心配すんねぇ、俺がオゴリまさぁ。」

「…じゃぁ…どっか行きましょうか…」

「おう!じゃぁ明日の朝迎えに行きやすんで、休み取っといてくだせぇ。」

ガチャリ、と電話が切れて静かになると、僕の心臓の音がドキドキと響く。
どっ…どうしよう…ドキドキが止まらないよ…なんて事言うんだよ、沖田さんは…
何!?お約束期待されてるの!?なんかこう、リボンとか巻いて、僕がプレゼントDとか…

イヤイヤイヤ、ナイナイナイナイ!!それは無い!!そんな事やったらヒく!絶対ヒく!!

大体、沖田さんの好きはそんな感じの好きじゃないよな…
…それは僕の願望だよな………



明日は沖田さんとで―…いやいやいや、遊びに行く日だ。
迎えに来るの、何時か聞き忘れたけど良いや。ど―せそんなに早くは無いだろうし…多少早く来たとしても、朝ごはん食べて待っててもらえば良いよね。
結局プレゼントは、んまい棒の詰め合わせにした。一応ウチに有った綺麗な包み紙でラッピングして、リボンを巻いた。
…友達なんだから、シャレで済むよね…うん…
明日は早起きするし、さっさと寝よっ…あ―、なんかドキドキして眠れな…グ――――――



新八をでーとに誘った。
逃げられそうになったんで、オゴリで釣ったら了承してくれやした。
俺の誕生日だって、知ってやすよねぇ?案外知らねぇかもな…どうせ新八は友達と遊びに行く、ってぇ感覚なんだろうねぇ…
俺が勇気を出して言った『大好き』にも無反応だったしねぇ…

まぁ良いでさぁ。

明日はプレゼントに新八を貰う事に決めやした。なんだかんだ言っても俺も若いんでさぁ。ゆっくり責めるなんて性に合いやせんや。
…大人しく貰われてくれやすかねぇ…?
あ―、何かドキドキして眠れねぇや…