逆チョコ大作戦



今年は男性から女性にチョコをあげましょう!

てれびのしーえむで、そんな事言ってやがった。
へぇ、そんな事やるヤツ居んのかよ、とか思いつつ何かつまみ喰いしようと立ち寄った台所で、山崎がめっちゃ張り切ってチョコを作ってた。

「へぇ、そんなモン作って土方さんにでもやるのかィ?」

俺がそうからかうと、山崎がハハン、と笑う。
…何かムカツクな…

「何言ってんですか、今年は男からチョコ渡してもいいんですよ?知らないんですか?沖田さん。」

イヤ、貰った方が良いだろィ…何でそんな勝ち誇った顔してやがんでィ。

「普段はそんな事しない様な人がこんなの作って渡したら、いっぺんでキュンとされちゃいますよ。」

俺の前に自慢げに差し出したチョコは、確かに綺麗に作ってあって美味そうで…
イラッとしたんで、全部喰ってやった…甘ったりィ…

「何すんですか隊長ぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

山崎の声を聞きつつ、台所を後にする。
でもそうか…本当に今年は男からチョコを渡すのか…じゃぁ俺も新八にチョコやんなきゃな!

早速大江戸ストアに行って、ばれんたいんのチョコ売り場に近付くと…
やっぱりありゃぁ嘘だったんじゃねェのか…?
スゲェぴんくに囲まれた売り場には沢山の女達が居て、きゃぁきゃぁ言いつつチョコを買ってた。
そん中にスタスタと入って行って何個かチョコを手に取ってみるけど…あんまり美味そうじゃぁねェなぁ…新八にはすげぇ美味いの喰わしてやりてェ…
俺がそんな事考えながら何個かチョコを手に取って見てると、周りの女達がきゃぁきゃぁと騒ぎ始める。

「ちょっと、アレ沖田さんじゃない!?」

「沖田さんよ!沖田さんよ!!」

「バレンタインのチョコ…見てるのよね?」

「土方さんにあげるのかしら!?」

「原田さんかもっ!」

「伊東さんじゃない?」

「え〜?近藤さんよ〜!」

…何かおっそろしい会話が聞こえてくんですが…何で俺がおっさんにチョコやらなきゃなんねェんでィ…
あんまり良いチョコもねェし…俺は何も買わねェでその場を後にした。

次の日は非番だったんで、ちょいと遠出して百貨店まで足を延ばしてみた。
流石に大江戸ストアとは違いまさァ!なんか美味そうなチョコが目白押しでィ!!
俺が店から店へと品定めして歩いてると、ちょいと向こうにどっかで見た黒服が見える。
アレぁ…近藤さんと土方じゃねェか…
俺がじっと見てると、2人が俺に気付く。

「お、総悟じゃないか。」

「…ちわす…」

「ゲッ…」

土方は綺麗にラッピングしたチョコを、隠すように小脇に挟む。
にゃろう…こいつも新八にチョコ渡すつもりか?

「きゃぁーっ!土方さんと沖田さんよっ!?あっ!土方さんがチョコ隠してる!アレ沖田さんにあげるチョコなんじゃない!?」

どっから見てたのか、又女達がキャーキャーと騒いでやがる…何でそんな風に見えんのかねェ…?

「なっ…んな訳ねーだろ!」

「きゃー!秘密だったのねっ!?」

土方が反応すっから、騒ぎが更に大きくなりやがった…
仕方ねぇんで、俺達はそそくさと百貨店を後にした。
…ったくなんでィ!折角良さそうなチョコ、有ったってェのに…
どうしようかと考えて、はぁ、と大きく溜息を吐くと、俺の肩をポンと叩いた近藤さんがスゲェ良い笑顔で言う。

「買えなかったものはしょうがない。一緒に手作りするか!」

「へぇ!?手作り…ですかィ…?」

「おー、出来る男だってアピールするチャンスだぞ?」

…そういやぁ、さっき山崎も言ってたっけ…

とりあえず本屋でチョコ作りの本を買って(近藤さんが)、大江戸ストアで板チョコを山程買い込んで(近藤さんが)、屯所に帰った。
まぁ、山崎でも作れるんだ、俺に作れねェ訳がねェや。