番外編 1年 夏
「皆集まるぜよ―。今日は部活の前に、学祭でやる模擬店を決めるきに、シャキシャキ集まれ―」
部長である坂本先輩が皆を集める。
学祭の模擬店か…剣道部は硬派だからな。
きっと剣道場で体験稽古なんかをやったりするんだろう。腕が鳴るぜ…
1・2年がゾロゾロ集まると、坂本先輩がコホンと咳払いする。
「まぁ、決めるちゅうても決まってる物を発表するっちゅうだけなんじゃけどな。」
坂本先輩がニヤリと笑い、隣に居た高杉先輩が物凄く嫌そうな顔をする。
…なんだ…?
「剣道部は恒例の女装喫茶をやるぜよ。衣装は俺が用意しちゅうきに、安心せぇよ。」
はぁ!?何とんでもない事言い出すんだコノ人は!?そんな事俺らがやるのか…!?
「1年はウエイトレス決定じゃきに、ガンバレ。今年は結構粒揃いじゃき、良かったぜよ―。」
坂本先輩が、あっはっはっはっとお気楽に笑う。あっはっはっじゃぁねぇっ!!
「オイ、近藤さん、流石にこれはなんとか…」
俺が隣に居た近藤さんに話を振ると、近藤さんは真面目な顔で言った。
「トシ、俺はメイド服似合うと思うか?」
既に着る気満々かよっ!?
「そーじゃねーだろ!俺らがそんなモン似合うかよ!!」
俺が近藤さんにツッコミを入れていると、聞きつけた坂本先輩がニラミをきかせてくる。
「お―、土方。何か文句あるがか?先輩の言う事は絶対じゃけんの―。お前や沖田や志村や山崎辺りは似合う思うぞ―?近藤や原田は…ウケると思うぜよ!アッハッハッハッ」
…ダメだ…コノ人ダメだ…なんかもう…ダメだ…
そこまで言われて逆らえるはずも無く、全員無言の抵抗を見せつつも、当日はメイド服を着せられた…
坂本先輩の読み通り、総悟・山崎・志村辺りはそこそこ見られるメイドになっていた。
着替えて出ていくと、志村姉とチャイナ娘がデジカメを引っさげて乱入し、全員の写真を撮り始めた。
何しやがる!?コイツら!!!!!
「オイ、志村姉!!何してくれてんだよ!!」
「あら土方君。これは坂本先輩に頼まれたのよ?良いのかしら、先輩の指示を邪魔しちゃって。部費の足しにするらしいわよ?コノ写真。大丈夫、土方君キレイよ?」
ニッコリと綺麗な笑顔で志村姉が吐き棄てる。背後に何か黒いモノが見える気がする…
くそっ、先輩って言やぁ黙ると思うなよ…
「お妙さ―ん!どうですか!俺のメイド姿は?」
どこからともなく近藤さんが湧いて出る。
…こんなこえェ女のどこが良いんだか…
「近藤君も可愛いわよ?いつもメイドで居れば良いのに。」
「本当ですか!?お妙さん!!」
…イヤ、嫌がらせだろ?多分…抜群に似合ってないよ、近藤さん…
「アネゴ、新八出てきたアル!!予想通りモーレツにカワイイヨ!!」
「あら、大変。新ちゃんをメインで撮らなくっちゃ!!」
志村姉とチャイナ娘がバタバタと志村弟の方に駆け寄る。
一緒に居た総悟も逃げ送れたらしく、変なポーズをとらされて、2ショット写真を物凄く撮られている。
…ガンバレ志村、ガンバレ総悟………
剣道部の女装喫茶は想像以上に好評で、始終繁盛していた。
見た目は可愛らしい総悟と志村は男子生徒に人気で、意外にも近藤さんと原田が女子に人気があった。そして、喫茶の売上以上に例のアレが売れたらしく、この後1年、剣道部は部費に困る事は無かった。
良いのか!?それで………
続く
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