ぱーてぃーぱーてぃー



結局昨日のうちに皆に手伝ってもらって、栗の下ごしらえとかお菓子関係は作れてしまった。
神楽ちゃんとそよちゃんはお菓子を作るのが初めてだったらしくて、凄く盛り上がっていた。

さぁ、今日は学校で栗パーティーだっ!
お弁当もちゃんと4人分持ったし、学校が楽しみ―!!

「新八ィ―、学校に行きやしょうぜ―」

総悟君が家まで迎えに来てくれた。こんなに朝早くに…珍しい―…

「おはよう総悟君。こんなに朝早くに珍しいね―?」

「弁当が重いんじゃねぇかと思いやしてね。後ろに乗りなせぇ。」

総悟君の自転車の後ろに乗って学校へ行く。
わぁ―、らっくらく―♪

「総悟君、重くない?僕こぐの変わろうか?」

「何言ってんでぃ。新八、オメ―軽すぎるぜ。ちゃんと飯食ってんのかぃ?」

本当に軽々とペダルをこいで行く。…僕、ちゃんと食べてるんだけどなぁ…最近は筋肉も付いてきたと思ってるのに…
学校に着いてからも大量なお弁当は総悟君が持ってくれた。

…僕、そんなに力無いように見えるのかなぁ…


そしてお昼。

昨日の栗拾いメンバー(坂田先生以外)と姉上チームで屋上に移動してお弁当を囲む。
今日の栗ご飯は気合を入れて作ったんで、結構な自信作に仕上がった。おかずは唐揚げとタコさんウインナーと卵焼き。
世界を巡るトレジャーハンターだと言う神楽ちゃんのお父さんがスゴイ援助をしてくれたので、ちょっと豪華にしてみました。

…ジュラルミンケースなんて、初めて見たよ…僕………

それぞれのお弁当箱の他にもお重2つに入れて持ってきた。
どうせ皆で食べてたら人数増えるんだしね。
こんなに沢山でお弁当を食べるなんて初めてで、楽しくて嬉しくて…まるで今日も遠足に来てるみたいだ。お弁当も好評で、皆美味しいって言ってくれた。

「タコ様は全部ワタシの物ヨ!そよちゃん、コレが新八のタコ様ウインナアル。すっごくすっごくオイシイアルヨ!!」

神楽ちゃんがウインナーのお重を抱えて、そよちゃんのお弁当箱にヒョイヒョイと入れてる。
あーあー…

「神楽ちゃん、皆で仲良く食べようね?」

僕が笑顔で言うと、びくっ、となった神楽ちゃんがお重を置く。
そしてボソボソと、新八のアノ笑顔はキケンヨ…とかそよちゃんに言っている。
失礼な…僕は優しく言ったぞ!?

「…アッチも注意するヨロシ…」

神楽ちゃんが指差す方を見ると、総悟君が唐揚げのお重を抱え込んでいた。

…子供か、アノ人は………

「総悟君!!何大人気無い事してんの!!そんな事やってるともうお弁当作りませんよっ!!」

ピタリ、と止まった総悟君もそろりとお重を置く。全く…
僕がお説教しようと向き直ると、入り口の方から声が掛かる。

「おー?志村じゃなかが。皆でお弁当か――?」

ぺたぺたと足音のした方を向くと、坂本先輩と高杉先輩が何故か大量のぶどうを抱えてこっちにやってくる。

「先輩っ!しゃす!…何でぶどうなんですか…?」

「おー、昨日3年は栗無山でぶどう狩りだったんじゃ。今日の昼飯ぜよ―。」

凄く嬉しそうな笑顔でぶどうを掲げる。
…先輩…涙が落ちそうです…

「…あの…良かったら栗ご飯も食べませんか…?2年は昨日梨持山だったんで沢山栗を拾ってきて作ったんですよ。」

坂本先輩が満面の笑みのままやってきて、僕の顔を覗き込む。

「えぇがか?高杉も?」

「はい!お2人が嫌でなければ…」

「そんじゃぁ遠慮なく戴こうかのぅ。なぁ、高杉?」

始終無言のままの高杉先輩もいつの間にか僕の隣に来ていてコクリ、と頷く。

びっ…びっくりしたっ…

お重から栗ご飯とおかずを取り分けて先輩達に渡すと、2人ともすぐに食べてくれた。

「うおっ、うまか―!!コレ、志村が作ったがか!?」

「あ、はい…」

「凄かねぇ…良いお嫁さんになれるとよ―!」

坂本先輩が何の邪気も無い良い笑顔で言い放つ。…多分、褒めてくれたんだろう………

「先輩…僕、嫁には行きませんから…」

「お?そうか?あはははははは」

…多分、他意は無い…

ちょっと遠い目であらぬ方向を見ていると、僕の目の前に、ズイッ、とお皿が現れる。
うぉっ!?何だ!?

「……………おかわり……………」

高杉先輩だった…

「あ、はい。お口に合いましたか?」

「………おいしい………」

にこ、と高杉先輩が微笑む。
ぅえぇえええええええっ!?高杉先輩が笑った!?初めて見たぞ…?

慌ててお皿についで渡すと、又無言のままもぎゅもぎゅと食べ始めた。
…先輩………こういう人だったんだ……

「新八ィ―、弁当美味かったぜぃ。明日は焼肉が良いですぜー」

総悟君がのしり、と頭にのしかかってくる。もう食べ終わったのか…

「重いよ総悟君。焼肉って、そんな豪華なお弁当…」

「安い肉買いに行きやしょうぜ?部活の後ならタイムセールになるはずでぃ。」

「あ、確かに。じゃぁ一緒に行きます?」

「おぅ。」

「デザートも有りますよ?総悟君。もう食べました?」

「おぅ、今から頂きまさぁ。」

「…………………ふうふ………………」

僕らのやりとりをじっと見ていた高杉先輩がおかしな事を言う。

「おー、高杉も思ぉちょったか!沖田と志村の会話はまるで新婚夫婦みたいじゃ―。」

あっはっはっと坂本先輩が笑う。
何言ってんだ、この人達…?

「イエ、先輩…僕ら男ですから…」

分からない…この先輩達ホント分からない…まぁ、高校生男子にしちゃ主婦みたいな会話してるけどさ。僕ら2人とも自分で買い物していかないと大変な事になる家だからさ…生き残る為なんスよ…

「ごちそ―さん。よっし志村、弁当のお礼にぶどう分けちゃるきに。持っていき。」

坂本先輩が、ドサドサと僕にぶどうを持たせる。その上から高杉先輩もぶどうを乗せる。

「あっ…有難う御座います!皆で食べても良いですかっ?」

「おー、食え食え。わしらの採ってきたぶどうじゃけん、美味いぜよ―――!」

あっと言う間にぶどうを食べて、じゃ―の―、と言いつつ坂本先輩が去ってゆく。高杉先輩は僕の隣でまだぶどうを食べていた。
2人に貰ったぶどうを皆で食べる。
甘くて美味しいぶどうだった。

全部食べ終わる頃には、5時間目があと15分となっていた。

…サボっちゃった…

まぁ良いか、1日ぐらい。
皆喜んでくれたし、先輩達の意外な一面も見れたし。


その日の部活は高杉先輩が妙に近くに居てイロイロ教えてくれた。
坂本先輩によると、僕は高杉先輩に懐かれたらしい。

「高杉がヒトに懐くなんて珍しかね―!志村良かったの―!」

…良かったのかどうかは分からないけど、良かった事にしておこう…


続く