弁当争奪戦


闘いの鐘は鳴った。
これに負ければ………


僕は目標物を子脇に抱え、ダッシュで教室を後にする。
幸い、僕の席は出口に近い。
いつの間にか居なくなっていた、唯一の味方はきっと屋上だ。
そこまで辿り着ければ…

脇目も振らず、ひたすら足を動かす。
ぜえぜえと鳴りだす喉は、気にも留めない。
今スピードを緩めたら、掴まってしまう…

「新八ー、逃げられると思ってるノカ…?」

「逃げてみせるさ!!」

更に加速して、かくんかくんと角を曲がりつつ、屋上を目指す。
階段を3段ずつ飛び上り、途中歩いている人達を盾にする。

やっと屋上に通じるドアが見える…あぁ、鍵が開いて居れば…逃げ切れる…

ドアに縋りつき、ノブを回すと…開いたっ!
そのまま屋上に飛び出すと、開いた先は、青空が広がる世界…

「おぅ、新八ィ…」

「総悟君っ!」

そのまま駆け寄って広げた腕に飛び込むと、後ろでチッ、と声がする。
あっ…危なかった…

「テメー、チャイナ!毎度毎度新八の弁当狙ってんじゃねぇよ。」

「そのおかげで新八はオマエに飛び込んでるネ。ワタシにカンシャして何かよこせヨ!」

「じゃぁ、コイツをやらぁ。」

総悟君が、持参のお弁当を神楽ちゃんに投げる。
あ…そのお弁当は…

「…珍しいアル…雨が降るネ…」

そう言いつつも、いそいそとお弁当を開いて食べた神楽ちゃんが、瞬間でフタを閉じた。

「何アルカ!コレ、殺人兵器アルっ!」

神楽ちゃんが、山崎君が飲んでたコーヒー牛乳を取り上げて、ごくごくと飲みほした。
そうだよね…神楽ちゃんにミツバさんのお弁当は…厳しいよね…
神楽ちゃんが自分のお弁当を食べ始めたんで、皆お弁当を食べ始める。

あぁ…運動した後のご飯は美味しいや…


END