坂本家のクリスマス



今日はクリスマスイブ。
本当なら女の子とイチャイチャしながら過ごしたい所じゃが、全員に振られてしもうた…
皆照れ屋じゃのぅ!
アッハッハッハッ…はぁ―――――っ…

「何しちょる、兄キ。こんな日に家でブラブラしちょるとは、寂しかね。彼女の一人もおらんがか?」

ワシが居間のソファでぼんやりしちょると、学校から帰ってきた妹が声を掛けよる。

生意気な妹じゃのー…

「そういうオマエはどうなんじゃ、陸奥。オマエじゃって家でブラブラしちょるぜよ。」

俺がそう言うたら、あからさまにムッとした顔になりよった。

「私はバカ兄キとは違うぜよ。変な男の誘いは全部断ったきに!それに…今日ぐらいしか父様と母様とゆっくり出来んが…」

「そうじゃのぅ…」

ウチはでっかいカンパニーっちゅうモンをやっちょるきに、こんな日ぐらいしか両親も姉ちゃんも家におらん。
いつも生意気な妹じゃけんど、可愛い所もあるのぅ。

「父様と母様は夜にならんと帰って来れんそうじゃ。姉ちゃんはもうそろそろ…」

ワシがそう言うか言わんかの内に、玄関が騒がしくなる。

「陸奥ー!辰馬ー!姉ちゃんのお帰りじゃー!迎えに来んかぁー!」

陸奥の顔がぱっと明るくなり、玄関に走る。

ウチの姉ちゃんは、巷ではスーパー派遣と呼ばれているやり手の豪傑じゃ。
いつも忙しく日本中を駆け廻っちょる。だから姉ちゃんも、盆暮れ正月ぐらいしか顔を合わせる事も無い…

「姉ちゃんおかえりー。」

ワシがのんびり歩いて行くと、先に走って行っとった陸奥が姉ちゃんに飛びついちょった。

「辰馬ー!遅いぜよ!!コレ全部台所に運んじゃりー!」

姉ちゃんは、どうやって持って帰ってきたんじゃ?と思うような量の荷物を玄関に置いちょった。
ワシが荷物を台所に運んで、こっそり抜け出そうとしちゅーと、姉ちゃんに捕まった。

「辰馬ー、どこいくがか?これから料理するきに、おまんも手伝うぜよ。」

ニヤリ、と笑う姉ちゃんに逆らえる筈もなく、ワシも料理させられる。
そっからは戦じゃ。
大量の食材を調理して、ドでかいテーブルに所狭しと並べる。
スーパーハケンだけあって、姉ちゃんの料理は美味い。ワシと陸奥もそこそこ器用じゃから、手際は悪くない筈なんじゃが、姉ちゃんには敵わん。やっぱり姉ちゃんはすごいのぅ。

料理が全部出来上がった頃、父様と母様が家に帰ってくる。

すぐにテーブルに着いて、家族の食事の始まりじゃ。
…皆どんな食欲じゃ…ボヤボヤしちょったら無くなるぜよ!!

テーブルに並んだ食事が無くなる頃には、陸奥が母様と姉ちゃんに挟まれて、嬉しそうに近況報告を始めちょる。
コイツのこんな顔は久し振りじゃ。
ワシも嬉しゅうなってニコニコ笑うちょると、父様が隣にやって来る。

「辰馬ァー、おんし景気の方はどうじゃ?」

ワシはネットで株をやっちょる。
まぁ、そこそこ儲けさせてもらっちょります。

「まぁまぁじゃ。父様は上場じゃのうー」

「噂は聞いちょるよ?辰馬はワシの商才ば受け継いじょるのー!」

アッハッハッハッ…

父様が豪快に笑う。

「後は賢い嫁さんを貰うだけじゃのう!良い娘はおらんがか?」

「そんな娘がおったら、今日こんな所にはおらんね。全員に振られたんじゃろ?」

姉ちゃんが、ふふん、と笑いながら父様に言う。

「姉ちゃん何で知っとるがか!?」

「やっぱりそうじゃろ。カマかけただけじゃ!」

「姉ちゃんひどかね―――――!?」

ワシがしょんぼりすると、皆が笑う。

…まぁええか…皆が幸せそうじゃから…
ま、こんなクリスマスも良いぜよ。

でも、来年こそは…おりょうちゃーん!!


続く


坂本さんの言葉おかしいかと思いますが、勘弁して下さいー!
姉ちゃんの名前は乙女(オトメ)さんで。