そよと兄上



「そよ、24日は昼から休みが取れたから、家でクリスマスパーティをやろう。」

兄上がそう仰って下さったので、神楽ちゃんと一緒に新八さんにクリスマスケーキの作り方を教わりました。
初めてにしては、上手に出来たと思います!
いつも忙しい兄上に、私がして差し上げられる事なんて些細な事ですけど、少しでも兄上に喜んで欲しくって頑張りました。

学校から帰ると、兄上は約束通りお家にいらっしゃって、温かい笑顔で

「おかえり。」

と仰って下さいました。

わぁ、久しぶりです!兄上のこんな笑顔を拝見したのは!!

私は急いでお料理の支度をして、大切なケーキを机の上に並べました。

「そよの手料理なんて初めてだね?今日は楽しみでワクワクしていたよ。」

兄上がとても嬉しそうな、優しい笑顔を又浮かべて下さいました。
それだけで私はとっても幸せな気分になれるのです。

「ケーキは初めて作ったんです!学校のお友達に、とても料理の上手な男の子がおりますの!その方に、神楽ちゃんとお姉様方と一緒に教えて頂いたのですよ!」

にこにことお話を聞いて下さっていたお兄様の顔が、ちょっと怖くなる。

「…男の子…?その人はそよのボーイフレンドかい…?」

新八さんの柔らかい笑顔が浮かんで、少しぽっ、としてしまいました…

「違います!新八さんはお友達です!」

私が思いっきり否定すると、兄上はちょっとホッとした様子で私の頭を撫でて下さいました。

「そうか、そうだよな。そよにボーイフレンドはまだ早いよな。」

「もう、兄上ったら…」

私達があはは、と笑っていると、兄上の秘書の方が、慌てた面持ちで入室していらっしゃいました。

「総理、お寛ぎの所申し訳ありませんが、至急官邸にお戻り下さい。大雪で首都機能がマヒ寸前です。」

「そうか、すぐ出る。」

いつもの顔に戻った兄上が、私の頭をもう一度撫でる。

「すまない、そよ…仕事が入った…」

そんな…折角のクリスマスパーティだったのに…でも、お仕事じゃ仕方ありませんね…
兄上の変わりは居ないんですもの…

「はい、兄上。行ってらっしゃいませ…」

「ごめんな…」

兄上が私の頭をくしゃくしゃと撫でて、サッと部屋を出て行かれる。

「この御馳走…どういたしましょう…」

私はちょっと悲しくなって下を向いてしまいました…

ガチャッ

「そよ、料理は帰ってきてから食べるから、兄さんの分は取って置いてくれよ?」

スーツに着替えた兄上が、顔を覗かせて私に言う。ちょっと照れたような優しい笑顔…

「はい。あんまり遅くなると、私が全部食べてしまいますよ?」

私は嬉しくなって、軽口たたいてみる。

「ははは…せめてケーキは残しておいてくれよ?」

そう言い残してカツカツと早足にお家を出て行かれる。
…有難う御座います、兄上…

「行ってらっしゃい、お兄様…」

少し寂しいけれど、兄上の優しさが身に染みて、心はぽかぽか温かくなった。

明日のクリスマスパーティでは神楽ちゃんと新八さんに有難うを言いましょう。
2人も今日が幸せなクリスマスイブでありますように…


続く