クリスマスは手作りケーキでイェーイ!大作戦



「それじゃぁ、今から『クリスマスは手作りケーキでイェーイ!大作戦』(命名神楽ちゃん)を始めます。皆さん準備は良いですか―?」

「「「「は―――――い!」」」」

姉上・神楽ちゃん・そよちゃん、それに何故かミツバさんが加わって、僕のケーキ作り講座が始まる。

ミツバさんは、ホラ、アレ、特殊なケーキ作んなきゃいけないのに…何で僕の所に…?

「新八君よろしくね?私、お菓子は作った事無くて。」

…お菓子…に入れて良いのか…?アレ………

「…スポンジは一緒ですからね…そこまでは一緒に作りましょうね…?」

僕が引き攣った笑顔で言うと、ミツバさんはにっこり微笑む。

「あら、全部一緒よ?何を勘違いしているのかしら。そーちゃんに食べてもらうんだもの。」

…ミツバさんもバレたくない人なのか…?

「そーですね(by笑っていいかも)。それじゃ、始めます。」


そして、阿鼻叫喚のケーキ作りが始まった。


「まずは、材料の分量を量るところからいきます。適当に量ると膨らまなかったりするので、しっかり量りましょう。」

ざっ…と全員がマスクを付ける。
…どっから出したんだよ………

「いや…そこまでしなくても…」

「甘いネ!新八!!粉をはかるとナゼかクシャミがでるネ!すべてパァね!銀ちゃんの頭みたいになるネ!!」

…上手い!ってそうじゃなくてっ!!僕が反論しようと口を開きかけると、全員がうんうんと頷いている。
…そうなんだ…僕がおかしいのっ!?ねぇ、コレ僕がおかしいの!?

そうこうしているうちに、姉上が手を震わせながら0.1gまで合わせようとしていた…

「姉上…そこまで量らなくても…」

「新ちゃん黙って!!今は話し掛けないで!!!」

姉上から本気のオーラが出てる…やめとこう…
なんとか皆それぞれの材料を量り終わって、次のステップへと移る。

「次は粉を混ぜて振るって、卵を割り混ぜて、バターを溶かします。」

らじゃ!と敬礼して、それぞれがそれぞれの作業に…って!!

「神楽ちゃん!粉はそっと振るう!!そこらじゅう真っ白だよ!!ミツバさん!バターは直接鍋に入れない!!湯煎して下さいっ!!姉上っ!卵は握り潰さないで下さいっ!!!!!そよちゃん!もう少し早く混ぜないと生クリーム泡立たないからっ!!」

おおわらわの後、なんとかスポンジが焼きあがった。
…不思議な事に、ちゃんと膨らんだ。

「じゃぁ、飾り付けをします。生クリームも泡立ててあるんで、半分に切ったスポンジにその半分を挟んで、もう半分で表面を飾ります。それぞれ行き渡ってると思うんで好きなように飾り付けて下さい。」

…クリームを塗るくらいはなんとか…

「…ってミツバさんっっっ!!珍味でも食べるつもりですかっっっっっ!?アンタ弟に何食べさせるつもりだっ!?」

気が付くと、ミツバさんが大量のマヨネーズに大量の一味を混ぜていた。
…赤い…赤いよ……

「あら、そーちゃんには新八君が作ってくれるんでしょ?」

「アンタ弟に食わせるって言ってなかったか!?いくら土方君だって、その赤はダメだろっ!?」

あ…言っちゃった…

「…誰に食べさせると………?」

ミツバさんの後ろに鬼が見える……

「いっ…いや…総悟君が………」

「あら、ミツバさんは土方君にあげるんでしょ?見たわよ?マフラー。」

姉上が、笑顔で割って入ってくれる。助かったよなそうでないような…
土方君は僕が皆にマフラーを編んでた頃、綺麗な編み目の赤いマフラーを巻いていた。
総悟君が巻いていた、白いマフラーとそっくりな赤いマフラーを。

姉上とミツバさんが、ニコニコ笑いながら静かに闘っている。
ひぃぃぃぃぃ―…

「ワタシは銀ちゃんに食べさせるアル!銀ちゃんきっとワタシに頭上がらなくなるネ!!」

「私はお兄様に…」

神楽ちゃんとそよちゃんが乱入してくれて、なんとか変な空気は吹っ飛ぶ。

「そう言う妙さんは…あら、チョコケーキ。近藤君かしら?」

「なっ!?」

「前にそーちゃんの所に遊びに来た時に聞いたのよ?」

ミツバさんがウフフ…と笑って言うと、姉上からは凶暴なオーラが発生する。

「あらあら妙さんったらヤキモチ?そんなに怖い顔していると、近藤君逃げちゃいますよ?」

「なっ…違いますっ!誰があんなゴリ………!!」

照れ隠しでキレた姉上を、ミツバさんがそろりと押さえる。

「照れちゃう気持ちは判るけど、いつまでも照れ隠ししていると、大切な事が伝わらないわよ?好き、って気持ちに良いも悪いも無いの。少しは素直にならないと、後で後悔する事になるわよ?」

ミツバさんが微笑みながら言う。流石、あの姉上が大人しくなった…

「とっ…とりあえず皆出来ましたね?じゃあ作ったケーキはそれぞれ持ち帰って下さい。僕が見本で作った分のケーキが有るんで、皆で食べましょう?」

僕が見本で作ったケーキを切り分ける。

「サスガ!新八の作ったケーキはウマイアルっ!」

「新八さんは何でも出来るんですね!尊敬します!」

「いつも悪いわね、新ちゃん。」

「ウフフ…本当、美味しい。そーちゃんは幸せ者ね。こんなお料理上手な新八君に毎日お弁当作ってもらえるなんて。」

ミツバさんがさらりと爆弾発言したァ―――――っ!!
そっ…総悟君…ばれてるよっ…

「すっ…すみません!出すぎたマネをっ…!」

「あら、良いのよ?新八君みたいな可愛い彼女の手作りのお弁当だもの。姉のお弁当なんて持って行かなくなるわ。」

…って、ちょっと待てっ!!今何か変な事言ってなかったかっ!?

「ミツバさんっ!!彼女、ってのは言い訳ですっ!!すんまっせん、ウソついてました!!大体、僕男なのに彼女、って変でしょ!?」

僕が声を張ると、ミツバさんがちょっとビックリした顔で微笑む。

「あら、そういうシュミの人達なのかと思ってたわ。違うの?」

「違いますっ!!!!!」

「そう…じゃぁそーちゃん…」

「…なんですか?」

「誰とクリスマスするつもりなのかしら…ここの所部活後にすっとアルバイトして彼女にプレゼント買うんだ!って言ってたから、新八君だとばっかり…クリスマス、一緒にやらないの?」

僕はもそもそと首を振る。
…彼女…?総悟君、いつの間に彼女なんて…
当然一緒にクリスマスやるんだって思ってたけど…そう言えば、約束してなかった…僕ら…
そっか…彼女か…友達だと思ってたのにな…僕には何も言ってくれないんだ…

なんでだろ…胸が苦しいよ…ココロが…イタイ…


続く